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恋人であり同士であり悪友であり。

 

「オイ、ジャック・オー!…テメェがエルフェルトをけしかけやがったんだな?」

紛らわしい事しやがってと法力通信のモニターの前で何処かで入手したらしきウイスキーを片手に、
どこかのホテルにでも滞在中なのか、革のソファでふんぞり返っている、かつての恋人に、いかにも可笑しいとばかりに返事をしていく。

「あら?…素直じゃないあなたの為と思ったんだけど…、迷惑だった?」

「………、知るか。」

眉を潜めて、視線を逸らす癖。

相変わらず嘘が不得意なのね。とそう伝えれば、勝手にほざいてろと、相変わらずの無愛想具合。
良くこれで今まで生きてこられたものだわと、寧ろ彼に根気よく付き合ってくれてたカイくんに感心せずにはいられなかった。

「それで?今はエルはどうしてるの?」

そう聞けば、何でテメェが、んな事知りたがるんだと悪態をつかれたので、

あなたの事だからエルを泣かせまくったんでしょうねと、反論をする。

「単純に心配だし、エルがきちんと立直れる様に慰めようかなぁって。」

含みをもたせたこの言葉。私の予想がドンピシャなら、きっとあなたはこう返す筈…。

「ああ!?…そいつは俺の仕事だ。邪魔すんな。」

……やっぱり!

予想通りの言葉に、私はニヤニヤが止まらなくて、通信しながら思わず寝転がっていたお城のベッドの枕に顔を埋めて、

脚をバタバタさせてしまう。

「あーもう!!…そうゆう所は本当に相変わらずなのね!」

「…テメェ…。」

「怒らない!怒らない!というか、寧ろエルから言わせれば、コレは私が怒るべきみたいな事のようなのね。

フレデリック、あなたはどう思う?」

「ああ?」

「エルにすごく謝られるのよ。謝ってくる理由は、エルの気持ち知った今のあなたなら判る筈でしょう?」

「…………。」

「私的には、あなたの負担がエルによって改善されるのだから万々歳なのよ。
私が宿している“ユノの天秤”とは違って、あなたの喉に宿している“背徳の炎”は、日々生理的欲求で身体が蝕まれてる。
私は“こんな”だからお役に立てそうもないし、ラムに関してはエルと違って、そんな風に創られてはいない。
それに、あなたは確実にエルフェルトに惹かれてる。前は自覚無かったかもしれないけれど、今なら自覚出来てるんじゃない?」

「…どうだかな。」

「またそうやって誤魔化すのね?まあ、いいわ。
“あなたが気絶したエルを何らかの手段を用いてお城に帰すんじゃなくて、一緒に居る事を選択した”。
私が知ってるかつてのあなたは、パーソナルスペースはやたら広くて、誰しもは受け入れないけど、

入れた者には割とズブズブだもの。今も変わって無ければだけどね。」

「…思い出したぜ、“アリア”、お前の分析癖は相変わらず、面倒臭ぇって事がな。」

「前の私なら、恋愛思考もあったから、割とあなたのツボをついていたのでしょうけど、

今の私は確かに、あなたが言う面倒臭さしか残ってないかも。
…昔のあなたは、こうして自分と対等に話が出来る同士を求めていた。そう言っていたっけ。」

「…そんな遥か昔の事なんざとうに忘れちまった。」

「ふふ、…そういう事にしときましょうか。でも、こと自分が好きになる女性に関しては、
インテリ女は可愛さの欠片もねぇって、出会い頭に私に言い切ったの、忘れちゃったのかしら?

売り言葉に買い言葉。頭に来た私は、常にあなたを意識する様になってた。
オシャレに無頓着だった私が、身なりに気を付けたりし始めたのもそのせい。

自分で言うのもなんだけど、元々素材は良かったのよね。
理系の大学だし男性比率高めなのもあったけど、それからあっという間にモテ始めちゃって!

でも、私はあなたをぎゃふんと言わせる事しか頭に無かった。
踏ん反り返ってあなたを見返す為に会いに行ったら、あなた、私に何て言ったと思う?

『これ以上綺麗になってどうする!?』って…。必死に肩を掴まれて…。

ズルいと思ったわ。…もうダメだった。それからあっという間…フレデリック、あなたに惹かれるのなんて。
恋人になれた後、寧ろあなたの方が私より先に私の事好きだったんだって知って、

あなたの天邪鬼で素直じゃ無い所を把握し初めていた頃だったから、物凄く納得したの。
そっか、あの煽り言葉は、愛情の現れだったのかって。

…今のあなた、エルにこれと同じ様な事、してる自覚はある?

好きな子に態と冷たい言葉かけたりして怒らせたりするの得意でしょう?
だから後からびっくりするのよ。あなたの愛情の深さに、執着の凄さに。

行動で伝わる部分も沢山ある。でも言葉をかまけていいって訳じゃないわ。エルには、きちんと伝えてあげて欲しい。
……っても、フレデリック、あなたはしなさそうなんだけどね。」

「…ジャック・オー、テメェが何勘違いしてんのか判らんがな、そんな感情なんぞ、俺は人間辞めた時にとっくに捨てちまったんだよ。

恋だの愛だの、そんなん知るか。
今の俺にあるモンは、この忌々しい身体が欲する欲望だけだ。
エルフェルト、コイツはそれを焚き付けた。だから抱く。…只それだけだぜ。」

「うーん、それも立派な愛欲なんだけど、そう言っても納得しななさそうよね。
そうね…多分、あなたの場合、経験したら理解できると思う。

あ!そうそう!避妊はきちんとね!
エルとあなたの子供なんて、シャレにならない規模の大騒ぎになっちゃうんだから!」

「テメェ!!何言いやがる!!当たり前だろうが!!」

「一応ね!ほら!実際抱いてみたら、気が変わるかもしれないから念の為!」

「…ったく…やれやれだぜ。」


 

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