DORAGON
DOES
HISUTMOST
TO HUNT
RABBITS
D
oragon
rabbits
&
R
私達のお母さん…ううん、『慈悲なき啓示』との全面戦争が集結し、
ジャスティスと融合する寸前にソルさんや、カイさん、シンやラム、いろんな人達に私は助け
お母さんが望んでいた絶対確定世界は誕生すること無く未然に防がれた。
その後、ソルさんと、『あの男』や『ギアメーカー』とかつて呼ばれていた飛鳥さんとの大規模な大喧嘩に私達は巻き込まれ、
何とか収束して、やっと人類は先の未来の為にお母さんが散々残した傷跡を片付けるべく、
現在、皆で総出で復興作業を頑張ってる。
ラムは少しでもその力になりたいと言った。その言葉に笑って大丈夫だと励ますシンが居た。
そのエールに、はにかみながらうなずくラムは、妹の私から見てもとてもかわいらしいと思った。
よかったね、ラム・・
きっとラムにそう言っても、何が?と聞かれてしまいそうだけど、
そしてシンに言っても、何がだ?と聞かれてしまいそうだけど。
ああ、いいなあ・・私は晴れ渡った青空を仰ぎ見る、何も陰りのない晴天。
まるで、お母さん・・『慈悲なる啓示』に
お前はジャスティスと融合して新人類になるのだと告げられたあの拘束されていた場所を思い出す。
怖かった。自分の想いが全く通じない。
自分が大切にしたいと思う全てが、見るも無残に壊されてしまうかも知れない恐怖。
私は人間じゃないけど人間が好き。
みんなに会う前、お母さんの呪縛から解き放たれたくて無意識に行動していた私は、
その呪縛を解く方法は結婚しかないと思い込み、
突っ走り、突撃して、いろんな男の人たちと(私は結婚を前提に)お付き合いしたりしてみたけど、
大体は婚姻届を見せる度に引かれて逃げられてしまう。
でも、一人だけそうじゃない人が現れた。
ハードロックのミュージシャン
彼とは何か他の人とは何か違うものを感じた。彼も私を愛してくれた。お母さんの呪縛が覚醒するまではとても楽しくて、
でも彼との結婚式当日に覚醒したのは・・
たぶん私が(ある一人以外)恋ができないようにお母さんからあらかじめそう書き込まれているから。
そして、今なら分かる。
どうして、お母さん『慈悲なる啓示』が彼と付き合って愛を少しでも育む事にエラーを示さなかったのか・・
それは、たぶん・・・
彼が、とある人物とどことなく似ていたから・・・
「おい、エルフェルト。いい加減起きやがれ。お前が待ち望んでるメシの時間だぞ」
ふぁっ!?!?
ゆ、夢!?
今の声は・・・
「そっ・・ソルさんっ??!」
復興作業を手伝い、お昼の休憩時間前に私がやれそうな事がないからと告げられ、
とりあえずお昼時までこの気持ちいい木陰で日向ぼっこしてたらまたもや醜態をさらしてしまっていたようで・・
うわあああ!!よりによってソルさんに私の寝顔見られたとかああああああ!!!!!
よだれが出してましたか?とか、白目向いてませんでしたか!?とか聞きたいけど、
聞くことすら地雷過ぎて聞けなくて、うわああと顔を隠しうなだれる私の姿に、
何してやがる。と呆れた声と溜息が後ろから聞こえてくる。
「ごっ…ご飯ですね!?だ、だだ大丈夫です!!今行きますっ!!」
すっくと立ち上がり、復興作業者達の為にカイさんやレオさんが手配した屋台村に向かうも、
歩き出す時に戸惑い過ぎて手足を同時に出してしまい、
木の根っこにつまづきバランスを崩して転ぶ寸前で、それをソルさんが難なく掴み引っぱり上げる。
その力の反動で、ソルさんの硬い胸板に私の鼻を思い切りぶつけ、涙目になりながら自分の鼻をさすった。
「っ、鼻がああ!!」
「…ったく、ぼーっとしてんじゃねえ!お前の頭は毎日湧いてやがるのか?」
深い溜息の後、怒鳴られた声がやたら近い。
上を見上げたらソルさんの呆れた表情。気がついたら私の肩がソルさんの腕と掌で抱きかかえられてて、
視線が合った瞬間、私はあまりにパニック過ぎて声無き声で叫び、恥ずかし過ぎて意識を失ってしまった。
「っ!?おい!?エルフェルト!?」
意識を失う最中、何処か遠くから私の名前を叫ぶソルさんの声が聞こえてきてたような気がした…。
◇◇◇◇◇
目が覚めたら、豪華絢爛な内装の天井のマス目が視界に飛び込む。
イリュリア城の私の部屋として充てがわれた客間にいつの間にか運ばれたのか、
ベッドから身を上げて周りを見渡すと、心配そうに私を見ていたラムの視線とかち合う。
「ラム、ここは…?、私いつの間に…」
「…エル、具合大丈夫…?」
「うん、大丈夫。…私確か、倒れそうになった所をソルさんに助けて貰って…その後意識失って…」
その時の事を事細かに思い出し顔が熱くなり頭がクラクラしてきた…
おでこに自分の掌を当てると、ラムが私の目をじっと見つめてくる。
「ソルが意識失ったエルを抱きかかえて歩いてる所見たから、ソルに事情を確認した。
その後心配だったから一応医者にエルの体調見て貰った、でも原因はわからない…」
「え!?ソルさんがわざわざ抱きかかえて!?ここまで運んでくれたの!?」
「うん、途中までシンも一緒にいたけど、エルの事私に任せ、今は二人とも復興作業に戻ってる」
うわあああああああ!!!!!
私ったらなんて事をぉぉおおお!?!?
頭を抱え、そのままの勢いでベッドのシーツに顔を突っ伏す私にラムが心配そうにのぞき込んでくる。
「エル…?まだ体調が良くない…?」
「…ラムっ!?わ私は…だ、大丈夫だよ!!心配ありがとう!!」
冷や汗ダラッダラな私を心から心配そうに見つめるラムを安心させる為に、ぎこちない笑顔を何とか取り繕った。
私が倒れた時に部屋まで運んでくれたお礼だけでもせめて言いたくて、
衛兵さんにソルさんの居場所を聞いたら、今お城に帰って来てるという。
ソルさんが居そうな場所にひたすら顔を出し、探し回っていたら、廊下の奥でそれらしき人影を見かける。
「ソルさ……!!」
隣にジャック・オーさんの姿を見かけ。
私は思わず声をかけようとした言葉を止めた。
え?
なんで…私…
別にジャック・オーさんが居たって全然かまわないのに…
固まる私に、楽しく談笑していたジャック・オーさんの方から私に声をかけてくれた。
「あ、エル!…さっき、気絶したって聞いたから、具合大丈夫?」
「…だから大丈夫だと言っただろうが、コイツの事だ、現にケロッとしてやがる」
「全く、何言ってるのよ!エルは女の子なのよ?女の子には色々とあるのよ!貴方はそうゆう所は相変わらずなのね」
二人の言葉がエコーがかかったみたいにモヤがかかって聞こえる…
私は、かろうじて絞り出せれた「ごめんなさい」と二人に声をかけて、その場から慌てて走り去った。
◇◇◇◇◇
イリュリア城を飛び出して、市外の綺麗に整備された河川敷のアンティーク調に彫られたベンチに座り、
顔を伏せて両手で顔を塞いだ。
私…っ……私…、…いつの間にか…ソルさんの事…好きになってたんだろ…
今朝倒れた理由も、最近、まともに視線を合わせれなかった事。
少し交わした言葉で凄く満たされた事も…。
多分、コレは俗に言う恋愛感情で…でも、未だにこの感情が自分では良くわからなくて…
どうしていいのかわからない…
そして…ソルさんと二人で歩くジャック・オーさんの姿を見かけて、心がぐちゃぐちゃになって………っ!!
「なんで、なんでなのかなあ…?
だってわかってた筈なのに、ソルさんにはジャック・オーさんが居るって…なのに…。私って…本当馬鹿だなあ…っ!」
誰も居ない河川敷で、独り言を呟きながら涙がとめどなく溢れて止まらなくなる。
「これから私…どうしたらいいの…。ジャック・オーさんに申し訳なくて、ソルさんには会えない…。」
そんなの悲しい…でも…!
さらさらと流れる水の流れを涙を流しながら見つめていたら、後ろから誰かが近付く足音がして、
もしかしたらと振り向けば、目深に白いローブを被った男の人が私に声をかけてきた…
「…君に伝えなければならない真実があるんだ…。でも…この内容は今までの君に伝えるには荷が重過ぎた。
けど、この事実は、“今”の君にとっての朗報になる」
凄く優しげな声色…
私は、その人の事をソルさんやジャック・オーさんから聞いた事しか知らないのに、
何故だか、昔から知っているような懐かしさを覚えてしまう。
出来れば僕について来て欲しい。それが、“彼らの為になる”
迷いも無く発せられたその言葉。
私は疑いもせずに彼からそっと差し出された掌を無意識に掴んでいた…
“彼らの為になる”
そんな甘美な言葉に囚われて…