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​親子喧嘩は犬も喰わない。

 

「ソルさんの馬鹿ぁあぁあっ!!!」

売り言葉に買い言葉。涙目で捨て台詞を吐き捨てた後に逃げ込んだ姉の部屋の、ベッドの上に鎮座していた

大きなレトリバーのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、
勉学に勤しんてる姉に愚痴を泣きながら呟けば、何時もの事だね。とスパッと言い切られてしまう。

「ラムはっ!どっちの味方なのっ!?」

「どっちの味方とかは関係無いよ。私はただ、客観的な視点を語っただけ。…エルはソルに心配かけすぎている。

エルは…自分でも判ってる筈だ。」

「…そ…うだけど……。何もそこまで怒らなくたって……。」

「私達姉妹とソルは血が繋がってはいない。なのに、ソルはエルの事を本気で心配してくれてる。」

「……うん。判ってるよ。私だって…それは、本当に有り難いって思ってるよ…。でも……。私は……。もっとソルさんに認めて欲しい……。

もう、子供じゃないのに…。」

「私達は、年齢だけで言ったらまだまだ子供だ。社会的に大人として認められる年齢ではない。」

「でも…っ!」

「エルはいつもそうだったね。私達がソルの養子になってから、ずっとソルに認めて欲しいって言っていた。

…ソルは、私達の事をきちんと認めてくれていると思う。
エルがソルに求めるモノは、私にはよくわからないけど、多分、私がソルは認めてると感じる所とはまた違う事なんだね。」

「ラム…。ラムは……好きな人…って居ないの?」

「好き?…私はエルの事もシンの事もソルの事もディズィーの事もカイの事も好きだ。」

「そうゆうんじゃなくって!!……自分にとって特別な人…。
ずっと近くにいて欲しくて、私の事だけ見て欲しい。その人にとっての特別になりたい。そんな人…。」

「…よくわからない。多分、私にとっての特別は、たった一人の妹であるエル…貴女に、母さんによってボロボロだった

私達姉妹を助けるきっかけを作ってくれたシン。

実際に大人として助けてくれたカイやディズィーにソル、皆大切だし、私にとって特別なんだ。」

「…ラムは恋したことないの?」

「恋……?…それを経て男女、または同性同士で付き合い初め、それの延長線で結婚し、男女の場合は子孫を繁栄させる…。
好きに特別があるのは、知識で知ってる。…でも……私にはまだよくわかってないと思う。

…エルは…ソルの事が特別なの?」

「……っうへぇあっ!?!?…ら、ラムっ!?…きゅ、急に何を…っ!?」

「その話題の振り方は、そうと言っているようにしか聞こえない。」

「………っ、やっぱり変…かな?、血は繋がっていないとはいえ、私達を育ててくれた…。

いわば、お父さんみたいな存在の人に恋しちゃうなんて…。
…自分でも判ってるの、これはいけない事なんだって。…でも…好きでいるだけでいいって思ってる筈なのに…、

出来れば子供扱いされたくない…。そんな事考えちゃう…。」

「それは、エルが大人になるまで待つべきだと思う。私達は実際にまだまだ子供だ。養って貰わないと生きていけない。

エルが大人になって独り立ちした時に改めて気持ちをソルに伝えてみればいい。
私達は血は繋がってはいないのだから、遺伝子的には何ら問題は無いと思う。法律的にはもしかしたら、

揉める事はあるかもしれないけど。」

「そう…だね……。だから、早く大人になりたくて、きれいになりたくて、きれいになるためにはお金が必要で、

お金稼ぎたくてアルバイトしはじめたら、バレて怒られて…、
学校の規律ではアルバイトしても良いってなってるのに、なんでソルさんはあんなにも怒るんだろう…?」

「エルは幼い頃から変な輩に攫われそうになったり、騙されてついていきそうになったり…そんな事ばっかりで、

物凄く心配されてるだけだ。…しかもこの辺りの夜は物騒だ。いくら私達は護身術をソルから徹底的に叩き込まれた身とはいえ、

相手が男であれば、ましてや多勢だった時は女一人の力じゃかないっこ無いんだ。」

「……そう…だけど……。」

「…もう一度、ソルと話し合いをするべきだ。感情的じゃなく冷静に。」

「でも、お金稼ぎたい理由がきれいになりたいからって言ったら絶対に怒る気がするなぁ…。」

「…確かにそれは怒るかもしれない。…でも…怒られるにしても、説得はしてみるべきだ。」

「…うん、わかった。ありがとうラム。…私ちょっと、ソルさんとお話してくる!」






ラムの部屋の扉を閉めれば、廊下からかすかに見えるリビングの明かりが見えて、緊張してくる。


ソルさんはいつも割とリビングのダイニングテーブルでご飯食べながら仕事してる事が多くて、

自室に書斎あるのにそこではほとんど仕事してる所を見たことが無かった。

私は意をけしてリビングにつながる扉のドアノブに手をかけた。





◇◇◇◇◇



「どうした?少しは頭が冷えたか?」


扉を開けた瞬間、そんな事言われて、私がラムの所に相談行ってたのを見越していたんだと理解する。

「働くの…許して貰えませんか?お金が必要なんです!」

「何の為だ?…必要な分は渡してる筈なんだがな。遊ぶ金欲しさっつう理由なら、ロクでもねぇから許す筈もねぇが。」

「遊ぶお金は要らないですっ!…ただ…お、おしゃれしたくて…お洋服とか…お化粧とか……。

今のお小遣いだとなかなか追いつかないから、アルバイトしたいんですっ!!」

「着飾って何処に行くつもりなんだテメェは!?化粧なんぞ、必要ねぇだろうが!!」

「早く大人になりたいんですよっ!!こんな童顔なんですもん!せめて外見だけでも大人っぽくなりたいじゃないですかっ!!」

「変に色気付きやがって!…男が出来たんだか何だか知らねぇが、外面ばっかり重視する野郎はろくなもんじゃねぇぞ!?」

「そんなんじゃありませんってばっ!!!」


冷静に話をしようとしても、やっぱり売り言葉に買い言葉になってしまう。
私もソルさんも白熱してきた最中に、リビングの扉が開き、入って来たラムが、「二人共煩い。」と言い放つ。

「ソル、さっきエルから色々聞いた。エルは純粋にただ働きたいだけであって、夜遊びたいお金欲しさとかじゃ無いよ。

ソルが言ってた彼氏が出来たとかそうゆう事でも無い。」

「それだけだと、こいつが着飾って化粧したいっつう理由にはならねぇがな。」

それはどう説明する?そうラムに聞くソルさんに、ラムも淡々と答えを述べていってる。

「…エルは、ソルに、早く大人として認めて欲したがってる。いつまでも子供に見られるのが嫌で、

お化粧したり大人っぽい服を着たりしてるらしい…。
私にはその理屈はわからないけど、これが今回のエルの騒動の本当の所だ。」

「ラムっ!!!なっ!?なんで言っちゃうのっ!!!?」

「きちんと理由を言った方が理解を得られやすいよ。その方がむやみに心配させずにすむ。」

「だ、だけど……っ!!!」

「……その発想がガキそのものだっつってんだ。…ったく…。」

「ガキじゃないですってばっ!!!仕事終わったらすぐ帰りますし!(そうじゃないとあなたに会えないじゃないですか!)

寄り道とかも一切しませんからっ!」

「それこそ、エルのアルバイト終わりの時刻がソルの仕事終わりの時刻と重なってはいないの?

…もし、エルが心配なら、ソルがエルと一緒に帰って来ればいいと思う。
私は一人の方が勉強捗るし、ご飯は何時ものとおりに二人の分作っとくから。なんなら外で二人で食べて来てもいい。」

「ら、ラム酷い!!私が邪魔だって言うのっ!?」

「二人がこんな喧嘩ばっかりだと、エルが泣き喚いて私の部屋にしょっちゅう来るから、ちょっと煩わしい。」

「ご、ごめん…!!でも…ご飯は三人で食べよう?その方が絶対美味しいからっ!」

「二人が帰って来たら三人で食べるよ。ただ、たまにご飯作りサボらせてくれたら助かるって程度だ。」

「ソルさんっ!ラムもこう言ってますし、お願いしますっ!!働かせてくださいっ!!」

「…エルフェルト、テメェ、仕事終わりは何時だ?」

「夜の八時くらいですが…?」

「…俺がテメェの職場の近くで待ってりゃいいんだな?ただしシフトや勤務時間変更は許さねぇからな。その条件なら、承諾してやる。」

「本当ですかっ!!!?ありがとうございますっ!!!」

私は感極まって、思わずソルさんに飛びついて抱き付いてしまった事に気付き、慌ててごめんなさいと身を離した。


 

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