DORAGON
DOES
HISUTMOST
TO HUNT
RABBITS
D
oragon
rabbits
&
R
リリンはリリスの身代わりに、アダムと闇へ堕ちていく。
R-18
つい先程、此処に心在らずとばかりに遠くを見つめるエルフェルトを運び、拠点として設置した地点に戻って来た。
その最中、時折虚ろな眼差しで後腐れ引くかの如く後ろを振り向き、ごめんなさい…ごめんなさいと、か細く聞こえる声に、
自ずと己の眉をしかめる。
謝って何になる。
あの餓鬼は、俺の赦しも無く俺のモンに一生消えぬ傷を付け、奴はまるでそれを望むかのように振る舞いやがった。
純粋な想い程残酷なモンはねぇ…。
自らの過去の出来事がふと湧き上がり、苦々しい感情に思わず舌打ちをすれば、目の前のモンが恐怖の表情を浮かべ、
俺を見つめ、只虚ろに涙を流しやがった。
「…もう、私の事は…放って置いて下さい…」
「ああ?」
「私の事…呆れてるんですよね…? ソルさんは初めから解っていて…色々私に言って下さっていたのに、わたし…私は…」
自責の念で頬を濡らし、涙を拭う余裕すら無いのか、その身体は脱力しきったままか。
先程まであんなに取り乱し、泣き叫び、声にならない声を上げていたが、今はそんな余力もねぇのか、虚ろに空(くう)を眺めてやがる…。
ふと、現状のコイツの姿と、過去に己が『奴』に騙され、絶望に呑まれ自暴自棄になった自身の姿と重なった。
バケモンに成り果てた姿を隠す様に人里から離れ、身を隠し、裏の世界に呆気なく転がり堕ち、心まで闇に染まっていったあの頃の、
掻き毟る様な怒号にも似た己自身に対する吐き気を催す程の嫌悪感。地をのた打ち、這いつくばった過去の日々…。
「忘れてぇのか?」
「…え?」
「エルフェルト、テメェが今抱く罪悪感、自己嫌悪…。総て忘れ去りたいのか? と俺は言ったんだ」
「そ、そんな事…」
出来るんですか?
強張る唇から、発せられた微かな音で、コイツが言いたい事なんぞ伝わって来やがる。
「一時凌ぎだがな。だが、テメェが望むんなら、とことん忘れさせてやる」
戸惑う目の前の奴の頬に、己の掌を沿わせる。
強張る唇に親指を滑らし、そのまま頬に流れる水分を拭った。その最中、視線が合う。
「だっ、ダメっ! …そんなの…ダメに決まってるじゃないですかっ! …私が忘れたら…“ルイ君” “ルイ君”はっ!」
…また『その名』かよ。
俺以外の野郎の名を呟き、涙を零し顔を伏せようとする目の前の女の顎を掴み、無理矢理叩き起こすかのように視線を埋めた。
ひたすら淡い水面の色。
…そうだ、それで良い。テメェの水面は俺だけを映し捕らえていればいい。
「お前が俺に言い放ったんだろうが。“どうしてあの餓鬼を助けなかったんだ” と。
そうだ、テメェの言う通り俺はあの餓鬼を見殺しにした。野郎の命が消え失せたのは俺のせいだ。
例え奴からの願いだろうか、その事実は変わらねえ。
お前からの贖罪だけじゃ足りねぇってこった。
…もう判るな? お前が俺を裁けばいい。
エルフェルト、テメェがそう望むなら、俺は地獄の果てまでお前と付き添ってやる」
「ソル…さ…」
ぽそりと呟く、その唇。
只々虚構を見るかのように虚ろだった眼は、今この最中、俺だけを映し出す。
「わ、わたし…、本当はっ…、こんなの…辛くて…、独りじゃ…とても背負いきれなくて…。わ…すれたい…。今は…一瞬だけでもいい…。
一瞬だけでもいいから全て忘れてしまいたい…っ! 後から罪は背負います…、だからっ、今は…どうか…どうか許してくださ……」
そう縋って訴えるコイツの眼からとめどなく水滴が溢れて零れ落ちる。
その色は “昔から見慣れきった“ 透き通った南国の水面を思い出させた。
今の己は、さながら神話における『知識の実』を食べてみろと差し出す人類最初の男か。
慈悲無き啓示、奴が再現したかった事はこうゆう事かよ…。新人類の誕生と構築。にしては原点回帰にも程かあるだろ。
俺ぁ神話なんぞ糞食らえだが、慈悲無き啓示、奴は己の理想に呑まれ、現実性を無視しやがる所があるからな。
何も知らねえ楽園で産まれ大切に扱われた『人形』は、伴侶と定められた男から差し出された善悪の実をかじり、
安易に闇に墜ちていく。って所か?
はっ、胡散臭ぇ…。眉唾も良い所だぜ。
そう心にゴチながら、憔悴しきったエルフェルトの身体を引き寄せた。
◆◆◆◆◆
外界からの強い風が、天幕の布を重く響かせる。先程己が無造作に置いた法力ランプの明かりが、
効力を失いかけてか朧気に瞬いていやがる。
「…っあ! あっ、あっ、あーーーー!」
白い喉をこちらに見せつけ、背中を反らしながら俺に跨がり、自らガンガン快感を貪り、
イき果てやがった女の身体を支えるように抱き締める。虚ろの眼が俺を捕らえ、その細っせぇ指が己の頬を欲しがるように撫でるからか、
「なんだ? まだ足りねぇのかよ…」
そう呟きながら、此方に引き寄せる。
もう、今宵何度も重ね慣れた唇をもう一度重ねれば、もはや遠慮なんぞ無くテメェの方から貪ってきやがった。
「口をもっと開けろ」
そう指示すれば、その通りに素直に従う。より届きやすくなった上顎のざらつきに舌を這わせば、
くぐもった声が此方の口内に響き渡った。
抜かずに繋がっていた局部内は、口内からの快感で尚より俺のブツを強く締め付け離さない。
またイクんだとわかりやすく眉をしかめ、中から湧き上がる快感による痙攣からの震えに、思わず此方もその締め付けで短く息を吐く。
うねる様に湧き上がる膣壁を通り過ぎ、子宮の入り口である最奥に自身のカリの先端部を軽く叩く様に幾度と無く突けば、
それだけでコイツは気が狂う様に何度もイキやがった。
事が一度落ち着き、何度か微睡んだ身体を休ませている時間に、
「テメェはすっかり節操の無ぇ性狂いに成り果てちまったな」と伝えれば、
「誰が私をこうしたのか、ご自身の胸に手を当てて聞いてみてくださいっ!」と耳許で俺の前髪を強く引っ張りながら喚いた。
「酷いじゃないですかっ…! ソルさんが一番知ってる癖に…っ! 私があなたしか…身体を許して無いって。
それなのに、私をビッチ扱いですか!」
「責任転換すんな。テメェは元々素質があんだよ」
「そうゆう事じゃありません…! 私は確かに元々そうゆう素質があるのかもしれませんが、
私が性行為したお相手は、ソルさん、あなたしか居ないんですよっ!
これからだって…私は…あなたしか、あなたしか居ないのに…」
強く引っ張られた髪はいつの間にか離され、何か支えるモンが無く、帰る場所が無くなった路頭に迷った子兎のような、
そんな視線を此方に送ってきやがる…。
「…っ」
その射る様な、訴える視線。エルフェルトの言葉が俺の脳内で反復しやがる…。
コイツからの言葉に身震いがした。今まで感じた事が無え系統の感覚に陥り、俺は思わず歪んだ笑みを浮かべ、自身の額に手を置く。
「ソルさん?」
訝しげに覗き込むエルフェルトの頭に手を置き、グシャグシャと撫でさすれば、相変わらず「髪の毛があ!」と喚くからか、
乱れた髪を戻すように髪の流れに沿い撫でれば、今度は心底嬉しそうに見つめてきやがる。思わず目を反らした。
「頭撫でられて喜ぶなんぞ、只の餓鬼の発想じゃねぇか…」
自ら餓鬼じゃねぇとほざいておきながらざまぁねぇな。そう呆れながら溜息を付けば、
「好きな人に褒められたら嬉しいのはあたりまえじゃ無いですか…」と、曲がりの無い視線で此方を見上げてきやがる…。
「どうしたら、もっと…ソルさんは、私の事を褒めてくれますか?」
純粋過ぎて、ある意味狂気に満ち溢れた言葉に、ゾクゾクとしたもんが脊髄の下から上まで駆け上り…思わず生唾を呑み込んだ。
遂に…此処まで来やがったか。たまらねぇ…。
一人脳内でそう呟きながら、目の前の馳走を貪る為に押し倒す。白く伸ばされた腕に誘われるように、遠慮無く此方も堕ちて行った…。