DORAGON
DOES
HISUTMOST
TO HUNT
RABBITS
D
oragon
rabbits
&
R
欲は容易に、想いに焚きつけていく。
R-18
『私の夢を叶えてくれませんか?』
エルフェルトから語られた内容に、随分、整理するのに一日程時間を費やした。
書斎で仕事をしながら、タバコを吹かしつつ、思考をするのが割と己の癖でもあった。
今更だが、アイツの気持ちを知った今となっては、それらしき傾向が言葉や態度に出てやがったな。
どうやら、ラムレザルとシンには気持ちがダダ漏れだったらしい。
ったく…気付かねぇのは己ばかりってやつか。
そもそもだ。一人娘を育てた身としては、幾ら養子といえども、ディズィー(娘)と同じ感覚になっちまうだろうが!
一人も二人も一緒だと割と大雑把に関わってた事を思い出す。
…確かに、ラムレザルに関してはディズィーと同じ感覚で対応してそれでいけた。
あいつは頭が良い、聞き分けも要領も良い。ディズィーに関しても同じ事が言えた。
ディズィーに関しては、結婚したいと俺に告げた時が、初めての反抗期だった気がしねぇでもないが…。
だが、エルフェルト、アイツに関しては、聞き分けが悪いは要領も悪いわ、
常に意見ばっかりで俺に喧嘩ふっかけて来やがった。
俺を好きだのなんだの思ってて尚喧嘩ふっかけて来やがってたのか。
…面倒臭ぇな。
だが、この面倒臭さは過去に身に覚えがあった。
………随分と見ないふりしてたんだがな。
今にして思えば、エルフェルト、アイツはアリアの思考回路とよく似てやがる。
アリアはまだマシだ。あいつは左脳に切り替われば、超合理主義に切り替わるからな。
右脳の思考回路がクソ似てやがる。業と遠回しに言いたい事言わせようとさせるわ、
思って無い事言い放ち後で謝って来たり、変に頑固で素直じゃねぇところとか、上げたらキリがねぇ。
只、アリアも、好意を伝える時は真っ直ぐだった。
『大好き…。』
そんな言葉を言われたのは随分久しい。
自身がふかしたタバコの煙が、自身で設計して作った、ダストファンに吸い込まれていく。
「……っ、」
少し過去を思い出しつつ、エルフェルトからの抱いて欲しいとほぼ言ってる言葉の旨を思い出したなら、
思わず背筋にゾクッとしたもんが流れた。
「ッ…おいおい、待て…っ、」
思わず自身でツッコミを入れてしまう。
エルフェルト、あいつが、アリアとかぶる部分を認識しただけで、この様かよ…っ。
エルフェルトには、返事は保留してある。少し考えさせてくれと。
初めはてんで子供だと思いこんでいたからか、かなり戸惑ったが、自覚して自身で認識した後の人間なんぞ現金なもんだ。
なんなら今すぐ抱けるもんなら抱きてぇ。
……………。
少し頭を冷やすか。
書斎の扉のノブを回し、風呂場に行くためにリビングを通りかかれば、
俺が先程座ってたソファーの前の床で座り込み、ソファーに突っ伏して眠るエルフェルトの姿。
……なんで、こんな体制で寝てんだよ。
疑問を感じ、顔を覗き込めば、伏せられた瞼から涙を流してやがった痕と、少し腫れた目元が視界に入る。
………こいつは…。
また勝手に自己完結し、勝手に断られたとかでも思い込みやがったな!
少しカッとなった俺はエルフェルトの軽く叩き起こし、微睡んでる奴の肩を抱き締めた。
「………、!!!……ぇ…えっ!?」
状況を察したエルフェルトは、あまりにパニクりながら、俺の腕から脱しようとするからか、より力を入れる。
「そ、ソルさ…っ!?ソルさんっ!!離し…っ!?」
瞳で訴えてきやがるエルフェルトの顎を掴み、上を向けさせ、そのまま軽くキスをした。
…………、触れた瞬間ビクッと身体を強張らせる身体と、呆けた顔と…。
少し時間が経てば、耳まで真っ赤に染まる頬と…。
自身の身体の底から、何やらゾクゾクしたもんが駆け上がってくる。
…快感伝達物質か。
言葉にすると呆気ねえが、伝達物質は人間にとって、ある意味麻薬よりも質が悪ぃ相当な劇薬だからな…。
「ど、どうして…」
ポツリとつぶやいたエルフェルトの言葉に、またテメェは勝手に自己完結してやがったなと声をかければ、
だって…!だって…!と目から涙をこぼしやがる。
「だってもクソもねぇ!俺は“考えさせろ”つったんだ。言葉の意味が判るか?もう一度言うぞ、俺は“考えさせろ”つったんだ!」
「…っ、そんな事…わ、判ってますっ!!でも、考えれば考える程、悪い方に考えが行っちゃってっ…。」
「良かったな。テメェのプレゼンが通っただろうが。」
「プレゼン???」
「テメェが俺にして欲しい旨を伝える手段だ。」
「いえ、あの…それはわかりますけど……???」
キスした意味を全く判ってねぇ…。思わず頭痛がした。
「…………クソッ……テメェ、そう来るか………。」
俺は自身の頭痛が酷くなる前にエルフェルトの顎を掴み、今度は奴の口内に自身の舌を突っ込んだ。
目を見開き真っ赤になって俺の胸板をバシバシ叩いてやがるが、とりあえず今はいい。
口上のザラザラした壁やら歯茎やら、舌の裏など、出来うる限り舌で弄くり、舌を絡め、
上唇と下唇とをチュ、チュと音を立てながら吸い、舐めれば、その内おとなしくなり、涙目で俺を見つめて来やがる。
はー、はー…と肩で息をし、俺の胸に顔を寄りかかり、ぐったりしてる姿。
ディープキスかました後だからか、猛烈に欲情し、
今まさにエルフェルトをソファーに押し倒して犯したい欲求を無理矢理押さえ込む。
エルフェルトの肩を抱く力が無意識に強くなった。
「ソルさん…痛っ…。」
「……、悪かったな…。」
俺の力が緩まった瞬間、俺の胸板に顔を擦りつけて、ギュッと俺にしがみつくエルフェルトに、
身体が思わず強張ってしまう。
「…お、おい…!!…あんま、俺にくっつくんじゃねぇ…!!」
下半身に熱が集まり、少しでも触れればわかる程度だが、幸いにも今は部屋着のスウェットだからか、
視覚的にはまだバレねぇだろ……。…立ち上がったら、一発でバレちまうが。
…てか、こいつ!?…いつの間に、…此処まで成長しやがったんだ!?
奴の豊満に育った二つの山のふにゅふにゅとした感触を俺の胸板と腹筋の狭間で感じ、
こいつも部屋着の薄いシャツワンピースだからか、ブラ越しでもダイレクトにその感触を感じ取ってしまう。
まさかエルフェルトとこんな風になるなんぞ思ってもみなかったからか、意識した事すら無かったが…
意識してみれば、こいつはとんでもねぇシロモノ過ぎるだろ!?
エルフェルト、こいつが何故こんなにも変質者に狙われる理由を、垣間見た気がした。
◇◇◇◇◇
「と言う訳で…ラム…、日時は…明日の…ソルさんが帰って来てから…になりました…。」
顔を真っ赤に染めて指をイジイジさせながら恥ずかしそうに伝えてくるエルに、
もう、何かしらの進展があったのか。となんとなく悟る。
「顔真っ赤だね。何かあったの?」
「うわあああ!!…………恥ずかしくて…い、言えない…けど……。」
そう呟きながらこくんと頷くエルの表情と、いつもならきれいにリップが塗られた口が少し霞んで見えるから、
何があったのかを察する。
「エル、明日は安全日なの?」
「へっ!?」
「SEXするって事は、排卵日をある程度自分で認識しとかないと駄目だ。
避妊は相手がソルだから抜かり無いと思うけど、エルも頭の片隅に置いといた方がいい。
わかんなかったら全部ソルが教えてくれる。」
「ら、ラムってば…ほ、本当に恋愛経験無いの…?わ、私なんかよりしっかりしてるよ…。」
「…?…知識として知っといた方が良いから勉強した事のだけだ。」
「で、でも…確かに…、恥ずかしいけど、ラムの言う通りかも…。もう少し、私も勉強しなきゃね。」
「明日はシンのところに上がらせて貰うから、エルは気にしなくていいよ。」
「…へっ!?…シ、シンのところって…!!
…ら、ラム!べ、別に、このお家って、各部屋防音対策なってるからそんな気にしなくても…!!」
「エルはきっと気にする…それに何だかそれは私もちょっと落ち着かない。」
「た、確かにそうかも…。」
「エル、教えてくれてありがとう。ちょっとソルに相談してくる。その後シンも連絡する。」
「う、うん…、な、なんか…ごめんなさい。」
「…私がそうするようにけしかけたんだ。エルが気にする事ではない。
………エル…。…想いが通じたみたいで良かったね…。」
「ラム…!うん…!ありがとう!!」
◇◇◇◇◇
冷たいシャワーをガンガン浴びながら、明日の日時のスケジュールについてひたすら考え込む。
仕事終わり、エルフェルトのバイト先に迎えに行った後、帰り道に晩飯寄って食うか買うかすりゃいいだろ。
先程、ラムレザルが、明日は帰らないとほざきやがるから、問い質せば、なんてことは無い、
エルフェルトに想いをさっさと告げろとけしかけたのは自分だから、と言い切りやがった。
『あの時、エルが死んでたかもしれない…。思い出す度震えが止まらないんだ…。
目が行き届く範囲で私もシンもエルを守っていくつもりだ。…でも、エルが自分から死を選ぶ事はもう避けたい。
繋ぎ止めれるのはソルだけなんだ。だから…。』
『ラムレザル、何もテメェが家を出る事なんぞしなくてもいいんだがな…。』
俺らがシティホテルか、なければモーテルにでも駆け込めばいい。
そう語るも、頑なに首を降る“娘”に、ここまでこいつが頑なに主張を曲げねぇのは初めてかもしれねぇな。と思い至る。
『…それはそれで寂しいんだ。一人、この広い部屋に取り残されるのは…。少し寂しい。』
『お前こそ、どこぞのシティホテルにでも泊まってみるか?朝食付きだ。今なら豪華ディナーもつけてやる。』
『どうして…?』
『エルフェルト、アイツが普段好き勝手やりやがるからな、テメェの負担が大きいだろ。
息抜ける時に、抜いておけ。あとだ、盛んな時期の野郎の家に女一人転がりこむのはやめておけ。
表面的にゃなんともねぇ顔せざる得ないが、ありゃ裏で相当苦しいからな。』
『でも、もうシンに告げてしまった…。』
『俺が後で話つけといてやる。晩飯くらいまでなら、シンのヤツの分くらいは出してやる。
いいか、…夜一人で出歩くんじゃねえぞ。』
『うん、分かった。ソル、ありがとう…。』
ラムレザルの事についてはとりあえず、これで良いだろ。あいつが下手を打つ事は無きに等しいからな。
水かひたすら流れる音に集中する。
どっちの部屋で致すか…。
ま、コレは既に悩むまでも無ぇな。
俺の部屋に置かれたベッドは、俺の身体の寸法に合わせた、かつそれよりより一回り大きく作ってある。
ただ単に窮屈なのが嫌なだけだったんだが、下手なHOTELよりよっぽど立派なもんにしやがっちまった。
こんな時に役立てようなんぞ特注してるときゃ微塵とも無かったが…。
ハッ……クソ……また思い出しちまった。
舌なんぞ突っ込むつもりはなかったんだがな……。
昔っからそうだ。あいつはやけに危なっかしくて、肝心な所が鈍い。
一度収まりかけた欲がもう一度膨らみ始め、ガチガチに立ち上がっていく自身の分身を、
自分の手で掴み、上下に擦り上げる。
「………っ、く……っ、は…」
漠然と競り上がってくる快感と、今自慰行為をする際に興奮させる為に脳裏に浮かべた姿は、
先程ソファーに押し倒し致したいと思った、まさしく自身の義理の娘の姿だった…。
より一層シャワーを全開に強める。
快感が放たれる数秒前、無意識に脳内に浮かび上がったあられも無い姿の義理の娘が、
啼きじゃくりながら佳がる姿を妄想し、久しくする事なんぞ無かった自慰行為に没頭していく…。
「……ッ………グッ!!」
自身のモノから快感の証が思い切り吐き出されていく。 無意識に名前を呼べば、より一層脳内が快感で満たされた。
吐き出された欲望が、浴室の壁に張り付いている様が視界に入る。
全て放った後…、放った欲も、“娘”を汚した罪悪感も、シャワーの音が全てかき消し…流し…証拠も綺麗に流していく……。
◇◇◇◇◇
バ、バイトにせいが出ない…。
今日、帰宅したら…!帰宅したらっ!!!
そう考えたら、心臓バクバクして、さっきっから単純なミスを繰り返していた…。
でも、あと10分もしたら、定時だから上がれる!!それまで私の心臓保って!!
そう願いながら胸を抑えてスーハーと深呼吸してたら声をかけられた。
「もしかして、今日具合が悪いの?」
私に色々教えてくれる先輩ウェイターさんに心配されてしまう。
「ご、ごめんなさい…!フォローたくさんして貰っちゃって…!」
「ああ、いいよ、それは全く気にしないで。
でも…そうだな…。もし君がどうしても気になるんなら、一度僕とデートしてくれない?
…前にも何度も言ってるけどさ、僕と付き合ってほしい。」
「ごめんなさい!前にも言いましたが…好きな人居るので…」
「前もそんな事言ってたよね、でも君が一方的に好きなだけなんでしょ?だったら僕にもまだチャンスは…。」
「…ねぇな!!」
カランカランとお店が閉店間際なのに正面入口からいきなり扉を強く開け放って入ってきた人に、
流石の先輩もびっくりしていた。
「…おい…エルフェルト。まだ終わんねぇのかよ。」
「そ、ソルさん…!あの、今着替えてきますから!」
私は慌てて駆け足階段かけのぼったからか、あっという間に二階の事務所に到着する、
一緒に定時で上がるはずの先輩の姿が見つからない。
私はちょっと不思議に思いながらも、とりあえず慌てて制服から自分の私服に着替えていった。
とりあえず着替え終わり、裏口の従業員用の通用口の扉を開ければ、ソルさんが既に待っていてくれた。
「ごめんなさい!お待たせしました!」
そう行って、駆け足でソルさんに近づけば、急に引き寄せられて思い切り抱き締められる。
「そ、ソルさんっ!?ど、どどどうしたんで………んんっ!?!?」
いきなり抱き締められたと思ったら、昨日生まれてソルさんと出来たキスを、今日は外出時にされた。
!?!?!?
わ…私の心のキャパシティが昨日から既にいっぱいいっぱいですうううううっ!!!!!
目をぐるぐるさせて固まる私に、
「テメェ、あの野郎にずっとあんなふうに口説かれてたのか!?」
と凄い剣幕で聞かれてどぎまぎしてしまう。
「え?へっ?…そ、そうですが…、あれ?ソルさんずっと私のアルバイトに夜迎えに来てくれてましたから、
もう知ってるものかと……。」
「………マジかよ…、あの野郎…!!いや、今思い出せば、……。」
何やらブツブツと語るソルさんに、
「も、もしかして…!少しは嫉妬して貰えたんですかね?…そうだったら嬉しいなぁ。」
ソルさんの腕の中で照れながら呟いた。
「………っ、今までは、…エルフェルト、お前をそんな目で見る事が無かったからな…。」
私にそう言われ、目をそらしながら焦るソルさんがかわいいな。そんなふうに思ってしまう。
「そんな目って…どんな目ですか?」
「テメェ…それは聞く事じゃねぇ!」
「教えて下さい!私は、ソルさんの事は何でも知りたいんです!」
「……チッ……テメェを女として見るって事だ…。」
ソルさんからのその言葉に、私は思わず嬉しすぎてソルさんに思い切り抱きついていた。
◇◇◇◇◇
ソルさんのバイクの後ろに乗るために、ヘルメットを渡された。
アレ?ソルさんはしないんですか?と聞けば、俺は丈夫だからな。と含み笑いを浮かべられる。
私がヘルメット固定するためのテープの着け方に戸惑っていると、
ソルさんが当たり前の様に私の首元に手をやり、つけてくれる。
今まで意識した事、あんまりなかったけど、こういうところは“お父さん”なんだなって思う…。
一緒に過ごしてきた月日を振り返れば、確かにソルさんは“お父さん”で私は“娘”だった。
それ以上でもそれ以下でも無くて…。
急に、心苦しいというか、背徳感というか…。これから帰宅して行うであろう事を想像すると、
今までこんな事感じた事無いのに、急に怖くなって、不安になってきてしまう。
「…おい…エルフェルト、どうした?」
ソルさんからの声掛けにハッとさせられた。
慌てて声のした上を向く。
私の不安そうな表情に、ソルさんは若干眉を潜めた。私は不安なのを悟られないように、
若干震えた指先を隠そうと後ろ持っていこうとした掌を掴まれて引き寄せられる。
「手が…冷てえ…、…エルフェルト、…怖いんなら、そう言え。」
私の心情を察したソルさんが溜息をつきながら私を包み込んてくれている。
「こ、怖いだなんてそんなことっ!……、でも、罪深い事するようで…、なんだか…心苦しくて……、」
「…テメェがそいつを言うのかよ…。この場合、“娘”に手を出す俺の方がよっぽど罪深いだろうが。」
そう言いながら自虐的に笑うソルさんに、ソルさんは何も悪くありません!と咄嗟に顔を見て訴えてしまう。
「…エルフェルト、お前、今初めて“それ”を感じたのか?」
「…はい、…長年の想いが叶った…って感じたら、ふと、ソルさんに“お父さん”を感じてしまって…。
あんなに、娘として見ないで!女性として見て!って事強く想い続けて、
いざ叶ったら、今度はやっぱり“お父さん”も恋しくなるとか…。私…どれだけ強欲なの…。」
「強欲、結構な事じゃねぇか。…テメェが欲するもんが俺にあるんならドンドン欲しろ。
俺に出来うる限りの事はしてやる。それだけのモンを、エルフェルト、お前は俺にくれるっつう事だからな。」
「え、え!?わ…私っ…そ、そんなに価値ありますかっ!?」
「テメェ、年間どんだけの野郎に告られた?」
「…そんなの、覚えてなんかないですよ…。」
「大体の女子の平均の告白された数なんぞ、片手以内が大半、両手指含めてが人口の少数…って所か?多いくらいだろうよ。
エルフェルト、お前はかなり抜けてるが人当たりは悪くねぇ、容姿も悪くねぇ。スタイルも悪くねぇ。
寧ろテメェの最大の売りは外見か?…だが、長く付き合いを維持すんには。相当な根気が必要になる。難点はそこか。」
「それってまるで私が外見しかいいとこ無いみたいな話じゃないですかっ!?!?」
「何言ってやがる、それも含めての総合的なテメェの評価だろうが。
世間での外見の評価、舐めんじゃねぇぞ。
それがあるだけで、まかり通る部分もあるだろうが。ま、中身が伴ってるかどうかはまた別としてな。
だが、外見だけかよ…と言われたくねぇなら、やらざるえなくなるだろ。」
「………、た、確かに…
でも、わ、私…ソルさんに何かあげれるものがあるんですね…?だったら、嬉しいな…。」
「普通に考えればテメェは選びたい放題な筈なんだがな。
誰もテメェが、こんな一人やもめのジジイ選ぶなんぞ思いもしないだろ。」
「そんな事ありません!!ソルさんはとてもカッコいいですからっ!!!」
ついムキになって大声で叫んでしまって、急に恥ずかしくなる。
「あ、あ…のっ!そのっ…!!」
つい焦ってしまい、しどろもどろになってる私の頭をヘルメット越しにポンポンとしてくるソルさんの姿。
「ま、そりゃ、アレだ。ギア細胞のせいで年くってねぇってだけだ…。
俺が本来の歳相応だったら、また違うものになってたかもしれねぇしな。」
「…むーっ!だからっ!そんな事ありませんってば!どんなソルさんだってソルさんなら、
私は絶対に好きになってる筈なんですっ!!!………って、またぁ!?…わ、私は何をぉおおっ!?」
慌てて口を手で塞ぐと、ソルさんがそっぽを向いて肩でワナワナと笑っている様が視界に映る。
はめたんですかっ!?わざとですかっ!?わざと私にこんな事言わせたんですかっ!!?
涙目でポカポカとソルさんの胸板を叩けば、その手を掴まれ、身体を引き寄せられる。
うわ、わわわわっ!!
な、なれない!!昨日からさんざん抱き締められたりしてるけど、全然なれませんよぉっ!!!
ってか!そ、ソルさんてばっ、こ…恋人に対して、ご、強引過ぎま……っ!
って!?…わ、私、恋人って!?
自分で思った事に自分で物凄く恥ずかしくなる。あ…あと、ソ、ソルさんって…こ、こんなに、す、スキンシップ多いのっ!?
腰を引き寄せられながら、…飯はどうしたもんか…。と耳元で聞こえてきたから、
つい、気持ちがいっぱいいっぱいでご飯喉に詰まりそうです…と呟いたなら、
奇遇だな。…俺もだ。とソルさんから言葉が返ってくる。
「エルフェルト、…“帰るぞ?…いいか?”」
喉が詰まって上手く声が出ない、
私はソルさんを見つめて、こくん。首を一回だけ頷いた。
ソルさんがバイクに跨りエンジンをかけ、後部座席に座ろうとする私の手を引いてくれた。
背中にギュッとしがみつく。
迎えに来てくれてる時から、もう何回もしてる事なのに、今日は心臓の音が破裂しそうに響いてる。
革ジャン越しでも、凄く判っちゃう逞しい背中。
私がしがみついたのを確認してから、ソルさんはバイクのエンジンを吹かして発進した。
夜のネオンをかけ抜けていく…。