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​シーツの狭間の情景を匂わせる少女。

R-18

ソルさんから、法力データとして送られた現在滞在しているホテルの地図を確認する。

よしっ、此処で間違いない!

そのホテルの佇まいは、私が思い描いていたものより遥かに立派で、思わず入口で立往生してしまう。
一応今日到着するって連絡しといたし、ホテルの受付でソルさんの名前出せば、

部屋に通して貰えるように手筈しといたってソルさんも言っていたし…、

まだ、夕刻にも満たない時間だから、ソルさんは居ないかもしれないけどっ!

エルフェルトっ!此処は突撃あるのみっ!!!

私はホテルの入口の重厚な扉に手をかけた。












重い扉を自分の体重かけて押していれば、ホテルのドアマンの方が開けてくれた。

お手数おかけしましたと謝られたけど、私はありがとうございますとペコリとお礼を伝える。
うーん、荷物はある程度は法力で運んでもらう事出来るんだけど、やっぱり旅行って荷物が多くなっちゃうなぁ…。

人間社会に潜伏してたときから愛用しているキャリーバッグをガラガラと引きずり、
ホテルのエントランスホールのカウンターまで足を運び、受付にて、ソルさんの名前を出すと、とても驚いた顔を浮かべられた。

え?え…?私何か変な事言ったの?

やたら驚かれただけで、難なく受付は済み、フロントの人に部屋まで案内され、(荷物も全て持ってくれた)
荷物も丁寧に支持した場所に置いてくれた。

ありがとうございますとチップを渡せば、笑顔でごゆっくりと一言言われて、こちらも笑顔を返す。

さ、流石高級ホテル…!!
しかもソルさんってば!!なんで最上階のスイートルームに滞在してるの!?!?

どれだけお金持ちなの!?

何かの間違いなんじゃないかって初めは思ったけど、確実にソルさんの荷物らしきモノがあったから、
あ…夢じゃ無かったって思わされて、緊張で震えあがる。

これは確かにソルさんの名前出したら驚かれる…!!

でも、ドアマンの人も受付の人達も、物珍しいげな視線はなんだったのだろう…?

…やっぱり、ソルさんと私は釣り合わないのかなぁ…。
最近は頑張って大人びた洋服やお化粧してても、地の童顔はどうしようもないのに…。

ちょっと悔しい気持ちになりながら、バスルームに貯めたお湯にバブルバス様の入浴剤を入れて湯船にお湯に流し込む。





◇◇◇◇◇




ソルさんと待ち合わせしてる約束の場所は、街の中心街の栄えてるバーを指定された。
てっきりまた、地方街のバーなのかなと思っていたら、案外お洒落で、ジャズの生演奏がお店に響いていた。

あ、女性も結構居るな。これなら私一人で入って行っても大丈夫そう。

ソルさんに言われた通りに、バーカウンターに足を運び、此処に座っても良いかとマスターさんに伺ってみれば、
君みたいな子がこんなバーに一人とは珍しいね。と声をかけられた。
待ち合わせなんです。と返せば、あ、なるほどね。とお酒のメニューを渡された。


「お酒は初めてかい?」

「えーと、今回で二回目ですかね?」

「リクエストとかは?」

「いえ、特に分からないので、マスターさんのおすすめお願いします」

「了解。……甘めが好み、可愛いのも好みってところか。でも、それだけじゃあ無いね。…ちょっと待ってて」

目の前に手際よく置いたシェイカーに次々とお酒を入れてシェイクしていく。

カクテルグラスに並々と注がれる淡いオレンジ色の液体に、私は目が釘付けになる。

「これは…?」

「ビトウィーンザシーツ…、僕が感じた君に贈るカクテルね」

「…え?どうゆう意味ですか?」 

「名前のまんまだよ。“シーツの狭間”

このカクテル見た目と味に反して度数が結構高いんだよね。寝る前に飲むカクテルの総称がナイトカクテルってわけ。

これもその一つ。君は一見どこにでもいる可愛い女の子に見えるけど、実は全くそうじゃないでしょ?」

「あ、ありがとうございます!…でも、“シーツの狭間”ってどこかしらちょっと……」

「あはは、気付いちゃったか。このカクテルは、割と飲みやすくて度数高いからね。

男性がよく女の子に勧めて酔い潰れたところをお持ち帰りなんて事も起こる訳。
…なんとなしに、君には、そんな女の子達の隙ってやつを感じるんだよなぁ」

「マスターさん!?それってちょっとひどい!?」

「ま、これはあくまでも僕からの忠告だからね?、只の歳食った爺さんの戯言だ」

「…そいつは同意だな。マスター、ジンの、ストレートをショットだ」

後ろから聞こえてきた低い声色。私は思わず緊張で身構える。

でも私の緊張やがんばりなんてソルさんはきっと気にも留めないんだろうな。そんな事をふと思う。
案の定、私の存在を無視して、マスターにお酒を催促してる声に、らしいなぁって苦笑いを浮かべてしまう。

「…ジンね。何本か秘蔵のあるけど、兄さんイケる口かい?
ストレートならオランダ産のイェネーフェルかジュネヴァがおすすめかな」

「どうせショットだ…両方持ってきやがれ、気に入った方を立て続けに飲む」

「了解したよ」

「…ソルさんっ!今日お仕事だったんですか?」

「仕事の締めはとっくに終わってたんだがな、ここまで来るのに時間かかっちまった」

私の声かけに、普通に返事してくれるソルさんは相変わらずなんだけど、ちょっと一抹の寂しさも感じちゃったりして…。
デートなのに…!しかもソルさんから誘ってくれたデートなのにっ!
ちょっとふてくされながらカクテルをちびちび舐めながらソルさんを見上げていたら、
ソルさんはあろう事か私のカクテルを後ろから取り上げ味見しだして、

声には出さないけど、私は思わずうひゃあって心の中で声をあげる。
 

い、いやあの…、そこ私の口つけてたとこ!?口紅ついてますうっ!?
今更そんな事でいちいち騒ぐ程の事じゃないけど、やっぱり変に意識しちゃう!しちゃうからっ!!!

「…わかっちゃいたが、こりゃくそ甘っめぇな。…おいマスター。コイツをからかってんじゃねぇよ」

「おや、そっか、彼が君を待ちぼうけさせた犯人って訳か。

…兄さん?この子大事なら、こんな場所で一人待ちぼうけさせちゃ駄目でしょうが。
この子は全く気付いてないけど、相当な視線、この子一人で掻き集めちゃってるよ?」

「此処は仮にも高級バーだろうが。客の安全は保証されてる筈だ。現に鈍いコイツを、

マスター、テメェが真っ先に声をかけて他の野郎共を牽制していた。…俺の見立てに間違いは無かったって訳だ」

「…まったく、恐ろしいね。…彼、もとからこんな性格なの?」

「あ、はい!もともとこんな感じですよ?」

ソルさんとマスターが何のお話してるのかが私には検討つかないけど、マスターに質問されて、

もともとこうだったんだと答えれば、ソルさんは小さな溜め息をついた。

え?私何か変な事言ったの?思わず首をかしげていると、

ソルさんが急に私の頭に掌を乗せてぐりぐりするから、思わずびっくりしてしまう。

「…君、彼に騙されたりとかしてない?」

「ハッ、ジジイ。コイツに“こんなカクテル”出しといてよく言いやがる」

ソルさんはやっぱりこのカクテルの謂れ知ってたんだなぁ…。
ちょっとドギマギしながらカクテルグラスに口を口をつけ、チラッとソルさんの方に視線を向けたら、なんだ?って顔をされる。

あ、やっぱり、気にしてないんだなぁって…見続けてみれば、

「…何見てやがる。飲み終わるんならさっさと次を決めやがれ」

そう言われ、メニュー表を渡される。
…私はちょっとだけ、腑に落ちないままそのメニュー表を受け取った。

「…あの…えっとー。またマスターさんにおまかせしていいですか?コレとても美味しかったから!」

「お、案外イケる口だね!了解よ、…はいっと、兄さんスマンね。君、酒の嗜み判ってそうだし、

ジュネヴァとイェネーフェルのボトル渡しとくから、勝手に自分で飲んでて貰っていい?

他の酒の欲しいならまた声かけて?この子にお酒出すの楽しくなってきちゃったからさ」

「…嫌な予感がするんだがな…」

「まま、兄さんにも悪い風にはしないさ」




◇◇◇◇◇



「わあ…綺麗!見事に三層に分かれてますね!なんかコーヒーみたいな色してますが…、コレなんていうカクテルなんですが?」

「コーヒーで正解!っても一番下はバーボン、真ん中がカルーアっていうコーヒーリキュールで、
一番上が只のミルク。ビトウィーンザシーツイケた口なら、これもきっと美味しい。保証するよ 」

「…おいテメェ!?」

「あはは、兄さん本当に酒好きなんだね。カクテルのレシピで名前分かるなんてさ」

「…コイツは変に有名だろうがっ!?…」

「まぁでも、このシリーズでのコイツは結構マイナーだからなぁ。

…どうも、兄さんと君見てると、このカクテルの名前通りの情景が脳裏に過るんだよねぇ。
兄さん、この子は生粋の“女の子”ってやつだ。

可愛くて可愛くて目に入れても痛く無いって気持ちはわかんなくは無いけど、ちゃんとそれ相応に扱ってやらないと」

「そうれすよっ!!ソルさんはっ私の扱いが乱暴なんれすよっ!!!
マスターさん!もっと言ってやってくらさいっ……………ソルさんは……ソルさんは……っ…」

「…あ、酔いが回ってきたね。流石に立て続けにこの度数はキツかったか」 

「…ったく、おいエルフェルト。テメェ、いいから俺に捕まれ。後ろに倒れちまうぞ」

「ふぁい…っ。あ…ソルさんの匂い…良い匂いだなぁ……。この首の後ろの耳の辺りの匂いが……うふふふ!
でもソルさんは綺麗な女性の視線ばっかり集め過ぎるんれすよっ!!そんな人にはこうしちゃいます!エイッ!!」

「…っ!?、テメっ!?なにしやがるっ!?」

「…ははっ、見事に頬に口紅つけられたねぇ!…ま、この子が無防備の考え無しってのはよく理解したよ。
…どうする?気分直しに他の酒飲むかい?年代物のウイスキーとかもあるよ?」

「…はあ…。任せる」



◇◇◇◇◇



「…頭がホワンホワンして楽しいなぁー!!ソルさんはどうですかー?」

「テメェは…いいから暴れるなっ!」

なんか…上と下がまっさかさまでふわふわしてるなぁ!!!

うふふー!たのしい!それに…なんだかわかんないけど、ソルさんのお顔が近い!
あれー?なんでこんなところに口紅の跡があるの?むう~!!わたしだってまけませんよー!!

対抗するようにキスマークの周りに自分の唇をたくさん押し当てて、マークをスタンプのようにつけていけば、
ソルさんから、テメェいい加減にしやがれと怒られる。

「失礼ですね!暴れてなんかいませんよー!!ソルさんの頬についてたどなたかのキスマークに対抗してたんですよっ!!」

「そいつはさっき、酔っ払ってぐだぐだのテメェがつけたんだろうが!!」

「そ…そうなんれすか…?わ…私ったら…ご、ごめんなさい!!」

急に恥ずかしくなって、顔を逸らせば、するんなら口にしやがれと聞こえて、

そんな恥ずかしいこと出来ないれすよ!って思わず叫んでしまう。

「…こっちの方がよっぽどだろうが!!テメェのせいで視線がうざってぇ…!」

心底嫌そうに眉をひそめるソルさんに、口にしちゃった方が騒ぎになるのでは…?って感じたけど、取り合えず考えない事にした。

「最後のお酒とても美味しかったなぁ!でもあのカクテルの名前結局教えて貰えずじまいだったんれすよねー?
あ、そういえば、ソルさんに聞けばいいってマスターさんが…!」

「…こんな人っけ多い場所で教えられるかよ」

「えー??どうしてれすかぁ!!!それじゃあ人がいなくなれば教えてくれますか!?」

「……いいから帰るぞ。」

「ヤダあ!!今すぐおしえてくらさいっ!!」

「……ちっ!!!…」

「へっ?えっ?どこ行くんれすか?こっちってホテルの方向とちょっと違…っ!?………んむぅ!?、?!?」

裏小路に連れて行かれ、道に下ろされた瞬間に唐突に唇を奪われて視界を白黒させる。
かっ…カクテルの名前とこれと何か関係があるの!?そんな事を脳裏に浮かべながら、終わらない口付けに応えていく。

あ…だめ…きもちいいよう…!!
脚の力が抜けそうになってソルさんの身体にもたれかかれば、腰を支えられてより一層深く噛み付くように貪られる。

やっ…!コレって…此処でしちゃダメなやつでは!?

まるでいつもベッドの上でされるような、前戯の前を彷彿とさせちゃう仕方の口付けに戸惑いながらも、
その内恥ずかしさなんてどっかに行っちゃって、しがみついて必死に応えて、気持ちよくなりすぎて、訳がわかんなくなってしまう。

…ソルさんっ…、ソルさんっ…!!

口の中で容赦なく浴びせられる舌の絡み合う音に、脳内が麻痺してってほんとに訳がわかんなくて、
ふとした瞬間に離された唇から伝う唾液に視界が奪われる。

離された後しばらくぼうっとソルさんのお顔を見てれば、私の前髪を優しく拭うように掻き上げられ、
額にちゅっとキスをされて、しばらく疑問符を浮かべてしまったけど、意味を理解した瞬間、頬が一気に熱くなるのを感じ取る。


「………“セックス・オンザ・ラグ”…さっきテメェが飲んだ酒の名前だ」

「セッ…!?…な、なんでっ!?あのお酒がそんな名前なんですかっ!?」

「エルフェルト、さっきテメェが飲んでいた、“ビトウィーン・ザ・シーツ”、“セックス・オンザ・ラグ”
総じて、“レディーキラー”と呼ばれている。度数が高い割には口当たりがよく呑みやすい。
何も知らねぇ女がバーで野郎にどんどん薦められ、いつの間にか酔い潰れ、意識の無いまま目が冷めれば、

裸のまま野郎とベッドを共にしていたっつう魂胆だ」

まさしくTHE ENDってヤツだぜ…と、ソルさんは鼻で嗤う。

「…え、えっと…?あの…、先程、マスターさんが、私っぽいお酒と出してくれたのは……」

「そんなん決まってるだろうが。エルフェルト、テメェは野郎共に容易に騙されて飲まされそうだ、

隙だらけだと、あのジジイは遠回しにお前に伝えたかったんだろうよ。
あのジジイの人を喰ってる感は気に食わねぇが、そいつに関しては同意しかねぇ」

「そっ、そんな事ないですよ!!私っ!お酒はソルさんとしか飲みにいきませんもん!」

「……だとしてもだ、例えばだ、今日飲んだ酒を、酒ではなく“飲料”として勧められたらどうだ?テメェの事だ、

何も疑わずに口付けるだろ。」

「…た、確かに、ジュースとして勧められたら飲んじゃうかもですが……。
でもっ!!もし私が見ず知らずの男の人に連れて行かれそうになっても、私は大丈夫です!
だって、ソルさん、貴方が必ず助けてくれますから!今まで全てそうだったじゃないですか!…ね?」

だから、私は何も怖くないですよ?と笑顔を向ければ、
ソルさんは眉間に皺を寄せて、目頭を親指と人差し指で押えながら、だからエルフェルト、テメェは…っ…。

とうなだれるように呟いている。

そんなソルさんの様子に首を傾げながらも、私は思い切りソルさんの腰にギュッと抱き付いた。

​​◇◇◇◇◇

エルフェルトを抱えたまま、ホテルのエントランス前の扉のノブを掴もうとすれば、中からドアマンらしきモンが扉を開けてくれる。

ま、この格式のホテルだと、これ位は当たり前か。
サービスの高さに思わず驚いたが、一人で世界中を飛び回ってた時期や、
シンを連れていた時期に泊まっていたホテルとの格の違いに、そりゃ当然だと納得する。

シンが育ちきった後なんぞ下手したら野営で十分だったしな。

余りに逞しく育ちすぎた義理の息子と呼んでも差し違わないであろう知人の息子の姿を脳裏に浮かべながら、
今自身が抱えているモンとのあまりの違いに苦笑いを浮かべてしまう。

先程散々酔っ払いまくり、やりたい放題だったからか、今は疲れ果てたのかすーすーと寝息を立ててやがる。

ガキかコイツは…。

まさに子供の行動パターンだと呆れてしまうが、本人にそう伝えれば何時もの如く怒涛に怒り出すに違いねぇ。

…面倒臭せぇな。

だが、そんなガキ臭くて面倒臭せぇモンに現に振り回されてるのは何処のどいつだ………、テメェ(己)じゃねぇかよ!!!

思わず脳内で自身を自身で突っ込んでしまう。

こんな時ばかりは自身の性的趣向と、コイツを創った存在を怨めしく感じる。
いやそもそもだ、コイツは俺の趣向を突いて狙って創られたっつう話だ…。…っ、そんなん不可抗力じゃねぇかっ!

そんな事をエントランス奥のエレベーター乗り込み口前まで足を運びながら、自身に言い訳を繰り返していたならば、
エレベーターの扉を開けたままにしてくれていたドアマンが、何階ですか?と俺に聞いてきやがった。
最上階だと告げれば、かしこまりました。と一言言われ、

旧世代の時代のモノをモチーフにしたであろうエレベーターがチーンと到着音を一度だけ鳴らし、扉が閉まって行く。

機械じみた造りが妙に懐かしい。動力は法力を使用してるんだろうが、このホテルのオーナーはよっぽどの懐古主義かよ。
だが懐古主義にしちゃ、随分とこのホテルは高層な気もするが、それは都心部だから致し方ねぇのか、懐古主義と実用主義の両方取りなのか。
ま、一つ難を上げるとすればだ、懐古主義と実用主義が組み合わされば、エレベーターは足腰悪いジジイよりか遅くなるっつう訳だ。

…クソ…タバコ吸いてぇ。

俺は内心舌打ちをして下を見れば、抱えている奴の眉を潜めて呻く姿を視界に収める。

薄く目を開き、開けきって無い瞼を何度も瞬きしやがる。
何を思ったのか、俺の首に両手を伸ばし、掴み抱き付き、触れるだけの口付けしてをしてきやがった。

一度離され顔を見れば、寝ぼけて夢でも見てんのかニコニコ笑顔を浮かべ、俺の名を読んできやがる。
首筋に抱きつかれ何度も名前を呼ばれ、啄むようにキスされるも、他人が居る手前無視していたが、流石にムカつき、
周りにバレないようにこっちから口を塞げば、目を覚ますどころかより力を抜き、舌を突き出してきやがった。

テメェ、…っ!好き勝手しやがって…!!!

…まあいい、…ドアマン一人だけだ。どうにでもなるだろ。

触れ合ってる唇をより深く、舌をより濃厚に絡めれば、その反動でやっと目が覚めたのか、
周りの状況を把握したエルフェルトは、頬を真っ赤に染め、俺の胸板をポカポカ叩き涙目で抗議してくる。

言っとくが、テメェが焚き付けやがったんだからな。

ちゅるっ、ぢゅッ…と舌が絡み合う音や吸う音がエレベーター内に響き渡る。
羞恥からか、ふる…っと身体を震わせ、細めた翡翠の瞳から溢れる涙。

自身の親指で涙を拭いながら、唇を容赦なくなぶり、吸い、逃げる舌を吸い、絡め、
抵抗する気力すら奪う程にしつこく、そのぷるんとした果実のような唇を貪っていく。

…っ、は…、最上階はまだかよ…。

下半身に意識が持っていかれる。さっさとこの抱きかかえてる奴を床に転がし、好きなように貪りつくしてぇ。

ベッドに運ぶ事すら面倒臭ぇな。



……“セックス・オンザ・ラグ”か。

あの酒場のマスターのジジイの予想通りになっちまうのは癪に触るが、
こいつの身体の調子が悪く、コッチは暫くおあずけさせられてたしな。

この調子じゃ加減なんてもん、どっかいっちまうかもしんねぇ。


最上階を告げるチャイムが一度鳴り響く。

涙目でこちらを見つめてきやがるエルフェルトの身体を自身の左肩に荷物のように担ぎ、
自身のGパンの尻ポケットからW$の札を二枚ほど、エレベーターの扉に立って固まっていたドアマンに横目で差し出した。

「…邪魔したな。」

そう一言告げて開いた扉をくぐれば、後ろからごゆっくりと声が聞こえてきやがった。

…ごゆっくりかよ。

ま、言われるまでもねぇ。否が応でもそうなるだろうけどな。

エレベーターが閉まった後、涙目で怒り出すエルフェルトの首裏を掴み、先程より激しくまるで啜るように口を…舌を貪る。

こいつの口内でのより弱い場所を狙い舌を激しく動かしていれば、案の定、腰が抜けたのか、ペタンと床に座り込むように崩れ落ちる。

静かになった所で身体を持ち上げ、肩に担ぎ、
開いた片手で、部屋の暗証法力を扉の端末に読み込ませていく。

ピッ、ガチャ。

鍵が開いた音と同士に、扉のノブを回す。

己の視界に入るのは玄関と綺麗に掃除され引かれたラグマット一枚。
そこに担いでいたエルフェルトを座らすように床に降ろし、押し倒し、そこに覆いかぶさった。
驚きで目を見開き見つめてくる奴の頭を梳き…頬を、首筋を撫でさする。

「エルフェルト、これが正真正銘のセックス・オンザ・ラグってヤツだ。
…良かったじゃねぇか。言葉として学ぶよりか、実体験すりゃ、否が応でも覚えちまう。」

「えええっちょっ!?…ま、待ってくださいっ!?せ、せめてリビングっ!?リビングで!?」

「あ?お前はこの後リビングでも致してぇってのか?…しゃあねぇな。覚えていればやってやるか。」

「そうじゃなくてぇええ!!!…わ、私的にはベッドがっ!ベッドが良いですっ!
床だと後から身体痛くしちゃう!!絶対後から節々痛くしちゃうからぁ!!!」

「…テメェも随分欲しがる用になりやがったな?…リビングの次はベッドでかよ。
…いいぜ?エルフェルト。とことん付き合ってやろうじゃねぇか。」

「私の話っ!?聞いてますかぁぁあああっ?!!!」


◇◇◇◇◇



 


「ふぁ、っ、あっ!あーっ!んんっ!?……またぁ、きもちいいの…きちゃ………ますぅ!!んんぁああぁああーー!!!」

床に敷かれた絨毯に頭を擦り付け、背中を弓形に反らせガクガクと中でイキまくるエルフェルトの腰を逃げないように掴み、
自身もその締め付けに促されて歯を食い縛り、射精を促されてか思わず呻き声を上げる。

避妊具越しに放たれた自身のソレは、この場でエルフェルトとまぐわって放った先程の二回の射精を含め三度目で、
予備の為にと身に着けていた避妊具が手元から尽きてしまい、流石にもう部屋の中に入るしかねぇか。と溜息をついた。

ブルルと最後に絞るように中に放ち終わった後自身のブツを抜き去れば、まだ快感の余韻でひくひく動くエルフェルトの膣口が、
己のブツにつけていた避妊具を咥え込んでそれだけ膣の中に残ってしまい、プラプラと所在無げに揺れている様子が垣間見える。

「エルフェルト、テメェの締め付けでゴムが取れちまったじゃねぇか…。」

そんなにしたかったのかよと耳元で囁やけば、涙目でこちらを睨みつけ、
ソルさんの馬鹿ぁああ!!!と盛大にブチ切れられる。

「…どっ…どうせこの残ったコンドーム、わっ、私に取れとかっ!!…取ってる所見せろ。とか言うんでしょうっ!!?
もうソルさんの思考パターンは読めてるんですっ!!!」

「判ってんならさっさとやりやがれ。テメェの希望で先がつかえてるんだよ。」

「…それは私の言葉に揚げ足取ってすり替えたソルさんの希望ですってばぁあぁあ!!!」

「…あ?…焦らさないで早く入れろっつったのは何処のどいつだ?
奥が良いっつって、欲しがりまくって自分から腰ガンガン振ってきやがったのは、…何処のどいつだ?ああ!?」 

「〜〜〜〜っ!!!わ…わかりましたっ!!、取ればいいんでしょう!?取ればぁっ!!!」

目の前で股を開こうにも、羞恥心が勝ってもじもじしだし、思わず此方から膝を掴み、ガバッと大股に開かせる。
涙目で眉を潜め、そのぶら下がったゴムの輪っかの部分を白い指先でおずおずと掴み、ぬぬぬとゆっくり抜き取る姿。
今のやり取りだけでもはや濡れまくってひくひくしてる目の前のエロ穴に興奮を押さえきれねぇ。

段々、ゴムの全貌が見え、白い液体らしきものが袋状の部分にたんまりと溜まってる様子に、三度目だった筈なんだがな。

と苦笑いを浮かべてしまう。

ちゅぽんと発しそうな程に勢いよく飛び出したコンドームを、抜き去った後俺に突き出し、これで文句無いですよね!?
と真っ赤な顔して睨む姿に、頭をグリグリすれば、そーゆー事じゃありませんっ!!!と余計に怒ってきやがった。

「な、なんでこんな時にも子供扱いなんですかぁああ!!!
もっとこう!“お前が色っぽいから興奮した”とか!!そんな台詞をですね!?」

「色っぽいはねぇな。」

「回答早っ!?じゃ、じゃあ…ど、うやってソルさんはわ、私に興奮……。い、…いえ…な、なんでもないです…。」

「そいつと性的興奮はイコールじゃねぇだろ。個人差が強い部分だしな。
ってか…エルフェルト、お前が言いたい事はその顔にまざまざと書いてあるんだがな…?テメェ…後で覚えてろよ?」

「わ、私っ!まだ何も言ってないのにっ!?」

口答えしやがる奴の身体の背中に手を回し身体を持ち上げ、リビングの扉に差しかかる。抱えたエルフェルトを片手だけで支え、

片手で、ドアノブを回し、あとは足で蹴り押した。
視界に映るのは、今時珍しいであろう大理石のリビングテーブルに黒革のソファー。

ソファーにエルフェルトを降ろし、そこで待ってろと、俺は自身の荷物を置いたであろう、ベッドルームの扉に手をかけようとした所で、

エルフェルトに引き止められる。

「わ、私もベッドルーム行きます!…というか…、あ、あのっ……つ、続き……されるんでしょう!?だ、だったら、べ、ベッドでし…したいなぁ……???とかですね……???
で、できれば…そ、その前にシャワーを浴びれたらなぁ…???とかぁ……!!」

手をもじもじさせながら頬を赤らめ、うつむくエルフェルトの姿。何も返事などせずにそのまま見つめていれば、

「あ、あのっ…!!ソルさんっ!!わ、私の話っ…!!き、聞いていますかっ!!!」

……次第に涙目になってオロオロしてきやがる。
簡単に予想がつく行動パターンと、俺が望んでいた表情を浮かべやがる目の前の“旨そうな獲物”に、無意識に生唾を飲み込んじまう。

目の前のコイツが、散々俺に悪趣味だと罵りやがる…趣向ってヤツか?
もっと見せろとばかりに、態とコイツの感情を揺さぶる言葉を探し思考する己に内心嗤ってしまう。

「な、何か…言ってくださいってばぁっ!!!………っ!…というかっ…そ、そんな目で…わっ…私を…みっ…見ないで下さいっ!!」

「…ああ?、なんの事だ?」

「な、何のことって…そ、そのですねっ!!…な、何で…さ、さっきっから、私に射る様な視線…向けてるのかなぁって…、
……は、恥ずかし過ぎて…、か、顔見れなくてですねっ!!!」

「の割には、テメェもガンガンコッチ見てくるじゃねぇか。」

「そ、それはだって!ソルさんがっ!!…わ、私の事…そんな目で見てくるんですもんっ!!!」

「エルフェルト…お前は、何時でも食っていいと言われた目の前にある馳走を、準備があるから今は食うのを待てと言われたらどうする?」

「え?…えっと…?とりあえず…どれくらい待つのか聞きますかね…?」

「時間は、待てっつったヤツの塩梅で決まりやがる。だが、テメェはめっちゃ飢えている、腹が減りすぎてさっさと食ってしまいてぇ。

コレならどうだ?」

「そ、ソレは困ります!!早く食べたいって言うかもしれません…。…それがどうしましたか…?」

「…話が合うじゃねぇか。…俺は今まさしく“餓えている”、喰っても、喰っても、さっきの量じゃ“前菜”にもなりゃしねぇ。」

「え…?、そ、そしたら…! 食事にしましょうよ!!」

「まったく…テメェの色気の無さはそこから来てんだがな…。…言葉の裏を読みやがれ。色気が欲しいっつんなら、特にだな。」

「…え?………あ!!!」

やっと俺の言葉の真意を悟ったのか、みるみる内に顔が赤くなりやがる。

エルフェルト、お前は“色気”が欲しいっつったが、色気と無垢は相反するモノでな。

色気は経験を重ねりゃ身につくが、無垢なんぞ、経験を重ねる毎に消えていく。
俺もコイツを知るまではそう思っていたんだがな。

“そう、この反応だ。”

泣きたい時に泣き、怒りてぇ時に怒りやがる。ふとしたきっかけで、移り行く表情の色に、
こうしたら、こうなるんじゃねぇのかっつう、こっちの好奇心を容易に弄ってきやがる。

テメェが悪趣味と言い切るこの趣向は、“研究者”なら、誰しもが持っている気質だろうよ。

…悪趣味か。

自身が過去に没頭しまくった研究や、そのかつて仲間と呼んでいた人物たちを脳内にかすめ、

そりゃ間違いねぇな。と鼻で笑った。


「…そ、ソルさん…?」

「…どうした?」

「で、出来れば…せめて…先にシャワーだけでも…っ!」

「テメェは、最後の“お楽しみ”ってやつを俺から奪うつもりか?」

「…へっ!?……、えっ!?
ま、またっ、そうゆう事をですねっ!さらっと言葉にしないで下さいよっ!!!」

「エルフェルト、お前は、これまで何度俺とまぐわった?…いい加減慣れて来てもいい筈なんだがな…。」

「…、な、慣れる訳無いじゃないですかぁぁあああ!!!」

感情を露わにして思い切り叫ぶ声に、俺は首筋がチリッチリと何かが走る様な軽い快感を感じずにはいられねぇ…。

「エルフェルト、いいか。…何もせずに只そこに座ってろ。尽きたゴムこっちに持ってくるだけの事だからな。」





◇◇◇◇◇





「そ、ソルさん、わ、私が上…なんですか…?」

「あん?、…初って訳じゃねぇだろ。…何戸惑ってやがる。」

「戸惑うも何もっ!!、わ、私からっ、そのっ…、ソルさんのモノを……挿入(い)れるのは…初めてですよっ!!!」

「何ごちゃごちゃ考えてやがる。ゴムは俺が予め着けてある。後は俺のモンをテメェの入り口に這わせて腰下ろすだけじゃねぇか。」

「…とっ、戸惑いとか…、見られてる恥ずかしさとかっ!!、色々あるんですっ!!!
それにっ、見ないでって言っても、ソルさんの事ですっ!絶対見てくるじゃないですかぁぁああ!!!」

「当たり前だ。寧ろそいつがテメェの真骨頂だろうが。」

「そ、それを真骨頂って言ってるソルさんの趣向がズレてるんですっ!!」

「いいからさっさとしろ。テメェがもたもたしやがるだけ、後からテメェがキツくなるって魂胆だか、いいのか?」

「っ〜〜〜!!や、やればいいんでしょうヤレばっ!!!」

「…わかりゃいいんだよ。俺は一切動かねぇ。テメェの好きにしろ。」

「…わ、私の好きに…ですか…?…い、言いましたねっ!?
…その言葉!後悔しても知りませんからっ!!!」



売り言葉に買い言葉。勢いに任せ叫んだかと思いきや、おもむろに俺のモンを掴み、
奴のその胸の谷間で挟みそのまま動かそうとするも、摩擦で動かなく、困り顔をし、俺の目を見つめてきやがる。

「…、あ、あれ??……確かこうすれば良いって…!?」

「…ったく。…テメェにしては発想は悪くねぇんだがな…。…よく考えてみろ。」

「…えっと、あの……
………何か潤滑油的なモノがあればいいんですけど…。」

「…わかってんじゃねぇか。もう解るだろうが、だったらさっさとしろ。」

「…へっ!?……えっと……。も、もしかして、何かそういうグッズ的なモノがあったりするんですかっ!?」

「…ったく…。口を大きく開けろ。」

「…ふぁい??」

目の前で開けられた唇に自身の人差し指と中指を入れ、ぬらぬらとテカる柔らかい舌を指ではさみ、クイッと引っ張る。
舌を刺激する度に、その刺激された舌からテラテラと滴る涎が、ピンポイントに奴の谷間に挟まれた俺の一物の先端にかかり、

谷間に飲み込まれていった。

羞恥心なのか顔を赤くし、涙目を浮かべて此方を睨んできやがる。

「…くっ…苦しいじゃないですかぁっ!?」

「ああ?…こうした方が余計な手間かけずに済むだろうが。
あと、唾液は乾きが早ぇ。テメェのモン挟みながら、その口で俺のモンも咥えとけ。咥えながら唾液を常に出し続けろ。」

「えええ!?」

「テメェが“ソレ”を知ってやがるっつう事はだ、余計な知識をどっか裏の端末で仕入れたっつう事だろうが。
この時代、青少年健全育成計画っちゅう名の規制で性的な知識は裏端末でしか見る事出来ねぇ筈だからな。
住み分けが出来た分、より刺激が激しくなり、
“パイズリ”のデフォが谷間にブツを挟んでただ動かすだけの甘っちょろいモンじゃ無ぇ筈だ。
…ソレを見てたテメェが“知らねぇ”訳はねぇ。」

「…//////////、そ、それはっ……!!
……って!!ソルさんだってっ!?、な、なんでっそんな事詳しいんですかっ!!!不健全ですっ!!ハレンチですっ!!!」

そう、叫びながらぽかすか俺を殴ってくるエルフェルトの拳を軽くあしらい、

「まだ“産まれたて”のテメェに欲情し、○○○おっ勃ててやがる奴に健全も糞もあるか。
それならまだしもだ、そのおっ勃てたブツをテメェの未開発な○○○にぶっ挿してF○CKしてる時点で、
青少年育成計画書は書き直し待ったなしってヤツだぜ。規制は“1歳から”ってな。」

「だからっ!私はっ!!」

「子供(ガキ)じゃねぇってんだろ?…だったら出来るだろうが。」

そう促せば、少しふくれっ面で睨みながら、俺のブツにその体格にしては育ちまくってやがる両胸を包み込み、
収まりきれなくはみ出た鬼頭にその色付いだ小せえ口でパクっと加え込み、先程俺が言った通りに、唾液を出してヌルヌルにしていく。

「…ソルさん…、あの、このまま、コンドームつけたままで大丈夫なんですか?」

「どうせすぐ着ける事になるだろうが、そのままで良いだろ。テメェのその拙い動きで、イケるとは思えないからな。ま、ゆるゆるやれ。」








◇◇◇◇◇
 

……ま、こんなもんだろ。


エルフェルトの両の軟肉が、己のブツを包み込みくにゅくにゅと絡み付いてきやがる。

言われた通りに、自身の胸を両手で押さえ挟みながら俺の先端を口で頬張り、と同時に必死に動かしてるからか、
こいつの額から汗が流れていく様が見て取れた。

コイツの中に入れた程じゃ無いが、確かに悪かねぇな。
女の個人差にもよるが、場合によっちゃ、ペッティングの方が
遥かに具合が良い場合もあるしな。(その女の技術にもよるが)

俺をどうにかさせようと必死に奉仕し、なんとか良い反応を引き出そうとしやがる
目の前のコイツの頭に掌を置いてみる。

俺が余りにも反応が薄いからか、だんだん涙目になって来やがってるが、
薄桃の柔い髪を指で撫でさすりながら、…悪かねぇ。と呟けば、デカい眼を驚きで見開き、
次の瞬間、余りに嬉しそうに笑みを浮かべた表情に、思わず己のブツが反応してしまう。

いきなり物量が大きくなった肉棒に、驚いたエルフェルトは
俺の顔をまじまじと見つめてきやがった。

「テメェ………いいから、こっち見るんじゃねぇよ。」

俺のその反応に気分を良くした奴は、より必死に口と胸を動かし、
俺も思わず奴の肩を掴み、無意識に自身の腰を自身で動かしていたらしい。
奴が必死にそれに応えようとするその苦しげな表情に、 俺自身も段々興奮が抑えられなくなる。


「………、…っぐ!…」


腰が戦慄き、避妊具越しに奴の谷間と口内で達し、
暫くエルフェルトの頭を自身の両腕で抱えて、押さえ込む。

………これなら、避妊具外しときゃ良かったか。

避妊具越しに未だに射精が終わらずビクビクしている俺のブツを、未だにその小せえ口と舌でペロペロ
しゃぶってやがるエルフェルトの姿に、自身の精液を口内に注ぎ込む想像が容易に出来、少しだけ後悔の念を抱く。

射精も終わり、もう離せとばかりに頭をすくように撫で擦れば、おずおずと俺のモンから手を離し、
その撫で擦る手に頬を擦りつけてきやがった。気持ち良かったですか?と聞く笑顔は、
汗だくで前髪が額に張り付き、ほのかに蒸気した頬を染めながら、疲れから気怠さをまとっている。
額に張り付いた奴の前髪を払いながら、思わず

「…何言ってやがる、あんなん技術の技の字すらねぇよ。」

と溜息を付いた。

「…むう!今っ!私のお口でイキましたよね!?…途中から無理矢理肩と頭掴まれて!ソルさんから腰動かしたりして!!」

あれはなんだったんですか!?
そう詰め寄るエルフェルトの両頬を思わず己の両手で掴み、ギュっとつまんで引っ張った。

「なにずるんでずが!?」

「テメェの技術でイッたんじゃねぇ。」

「じゃあ!なんだっていうんですかっ!!証拠がありますから逃れられませんよっ!!」

そう憤りながら、俺の吐き出した避妊具に収まった精液を突き出してきやがる。
改めて思うが、とんでもねぇ奴だな。コイツは…。

「…テメェがよく言ってる“乙女”ってやつは、恥ずかしげも無く、使用済みの避妊具を掴んで見せつけるもんなのかよ。」

「………!?、そ、そそそれはっ!?!!ソ、ソっ、ソルさんがっ素直じゃ無いからっ!!?
~~~~!!!ソルさんの馬鹿ぁ!!!」


涙目で視線を反らして顔を真っ赤にしているエルフェルトの表情に、
俺のブツが凝り性も無く反応しやがる。

無意識にエルフェルト、奴の顎を掴み、吸うように奴の唇に自身の口を押し当て、奴が油断した隙に、
使用済みの避妊具をダストボックスに投げ入れた。

「~~~~っ!?」

余りにも予告なく急だったからなのか、俺の胸板をポカポカ叩く右手を掴んだ。そのまま指先を
俺の指先で絡め取り、ソファーに押し倒し、激しい口付を続行させる。
そのまま口付を続行しながら、ソファー近くの大理石で出来たテーブルに置かれた避妊具を取るために手を伸ばし、
奴の唇に自身の舌をガン入れしつつ、その避妊具の袋をピリッと破いた。

一旦唇を離し、自身のブツに避妊具を装着している最中、今度はエルフェルト、奴から俺の肩に腕を回し、
俺の唇に口を押し当ててきやがった。

「…ったく、テメェが“そうなっちまった”のは誰の影響だ?」

眉を潜めて含み笑いを浮かべて曰えば、

「…とある有名な悪い殿方さんです。ご存知ですか?」

悪戯をする子供(ガキ)のような表情を浮かべ 見つめて返してきやがった。

「…さぁな。だが…エルフェルト、テメェが 子供(ガキ)臭ぇ女から、今みてぇな佳(い)い女に近付いたのは、
…ま、粗方“そいつ”のお陰って奴か?」

「……え!?……ソルさん…今…なんて………っ!?
なんて言いまし……んあぁあぁあぁあ♡♡♡」

先程エルフェルトが俺の肩にしがみついてる体制を利用し、そのまま奴の腰を俺の太腿の上に跨がせ、
腰を降ろさせていく。そのまま対面座位でそそり勃った己をエルフェルトの膣奥に突っ込めば、その容赦無ぇ締め付けが
全方向から感じ、先程とは比べもんにならねぇ程の快感で、思わず溜息を付いた。

「…っ、オラ!!エルフェルトっ!!…悠長に…っ、喋ってる暇があるのかよっ!!」

パチュ、パチュっ、パチュっ!!

ソファーのスプリングを利用し容赦なく下から突き上げていく。

俺の首に必死にしがみつき、

「…んっ、あっ♡やぁっ♡あっあぁあぁあ!!!」

と声を荒らげるエルフェルトの姿に、興奮状態は加速していった。

「らめ…!!ソルしゃんっ!?はげしっ!!んっああ!!…んっくぅっ!?いっ、いきなりしゅぎるのぉ!!!
ソルしゃんはいつもいきなりしゅぎるからぁあぁあぁあ!!!
らめ…らめぇええっ♡もぅっ!とんじゃ…っ!?わたしっとんぢゃううっ!!!」

「…オラッ!!!…エルフェルト!!!構えやがれっ!!!」

「……っ、まっ、待ってくらさ…っ!?ひゃああああーーーーっ!?」







◇◇◇◇◇
 

 

 


「…ったく。テメェから言い出しといて、ざまぁねぇな…。」

先程のソファでの行為後、意識を失ったエルフェルトを抱きかかえ、その身体を寝室のベッドに寝かせ、
奴の汗で張り付いた髪を払いながら、頬をスッと撫でる。

先程自ら脱いだ上着やエルフェルトの衣類が、玄関のエントランスに放置されてる事を思い出し、
回収の為に気だるくベッドから立ち上がった。

適当にクローゼットに放り込んだ後、奴がまだ寝こけているベッドに腰をかけ、
自身の履いてるGパンの尻ポケットから、長年使い古したジッポーライターとタバコの箱を取り出し、
1本咥え慣れた手付きで火を灯す。

…こいつがここまで事後寝こけるなんぞ、珍しいな。
白い煙を溜息のように吐きながら、ふとそんな事を思考する。

奉仕で体力使ったからか…。
いつもは無駄な手間だとさせねぇしな。

エルフェルト、コイツの場合、奉仕させるより
中に突っ込んだ方が遥かに具合が良い。中の具合に関しては、俺が記憶しているどの女よりも
抜群に優れてやがる。

子宮口の手前にコリコリとした膣壁があり、
ピストンの度に亀頭をこすりつければ激しく感じるのか、
中がうねうねと絡みつく。その動きが俺のモンをねっとりと包み込み、
膣全体での締め付けで、奴の膣内が俺のブツを容赦無くちゅうちゅう吸い込んできやがる。
奴がイク瞬間、膣の中間から最奥にかけて亀頭近辺が程よく締り、
油断してれば此方まで容易に射精をうながされちまう。

いきなり勢いで挿入した所で痛がるどころか寧ろ感じまくり、どんなに激しく揺さぶろうが、
(口では嫌がってるが)身体が悦んじまってやがる…。
現在寝こけている奴の顔を拝みながら、一度咥え火をつけた煙草を吸い込み、煙と共に溜息をついた。

…ったく、起きる気配すらねぇ。

発散しきれない自身の欲を持て余し、思わず眉間に皺を寄せる。

無理矢理起こしちまうか?いや、コイツがそれで起きた試しがねぇ。
寝込みを襲うか?…いや、そんなん、面白味が半減しちまうだろ。

ベッドルームに備え付けられていた机の上の灰皿で煙草の火を消し、奴が寝こけるベッドに腰を下ろす。
頬に手を添え、奴の唇に自身の親指を置き、つつ…と撫でる。

奴の眉間が若干寄り、無意識だろうが、右手で俺の掌を払いのける動作をしたかと思えば、
寝返りをうち、顔を両腕で隠すように身体を丸めやがった。

…猫かテメェは。

寝返りをうった際に視界に入った剥き出しになった片耳に噛りつき耳朶を吸い、耳の穴に舌を突っ込む。
わざとらしく音を立て、耳の裏側に舌を這わせ、先程何度も噛りつき鬱血の後が見て取れる
奴のうなじにもう一度容赦なく噛りついた。

「…っ!!?痛いっ!?!?、な、ななななんですかっ!?!?」

ベッドからいきなり身を起こし、俺を涙目で睨む奴の視線に、 思わず口角が上がっちまう。

「…なんて事するんですかっ!?…此処は服でなかなか隠せない場所なのにっ!?
だいたいソルさんはっ!!至る所噛みすぎなんですよっ!!!きっ、…キスマークならまだしも…、
噛りつかれるとかっ!!私は食べ物とかじゃないですからっ!!!」

「そうした方がテメェが気持ちいいんだろうが。何度俺に噛まれながら中で達した?
痛いと鳴き叫びながら、何度テメェに俺のモン絞り取られたと思ってんだ。
…忘れやがったんなら、今直ぐ思い出させてやろうか?」

「…け…結構です!!」

俺に噛りつかれたうなじに手を添えながら、涙目でぶつぶつ言ってやがる奴をとりあえず置いておき、
備え付けられていたクーラーの中に入って居たミネラルウォーターを出し、ビンの蓋をテーブルの端にぶつけ
開け、それを奴に手渡す。

「え?…あ、ありがとうございます…。」

「…酒飲んだ後は水分持ってかれるからな。とりあえずコイツを飲んでおけ。干乾びるだろうが。」

俺から受け取ったビンの入り口におずおず唇を近づけ、少しづつ喉に水分を通してる様を見て、
先程、奴が俺のブツを咥えていた光景を思い出し、顔を反らした。

もう大丈夫です。と半分ほど残った瓶を奴から渡され、
残しといてもしゃーねぇかと自身も瓶に口をつける。

「あの…ソルさん…」

「…なんだ?」

「あなたに、折り入って頼みたい事がありまして…」

コイツが俺に頼み事だと?珍しい事もあるもんだなと、奴の姿を見やれば、
言いづらそうに顔を反らし、えーと、そのぉ…と言わんばかりに、指先を遊んで、
頬だけじゃなく耳まで赤く染めてやがる。

「今の俺は気分が良い。だが早く言わねぇと気が変わっちまうぞ。」

「…ハイっ!!…、あ、ああのですねっ!!わ、私と……一緒にっ…!!!
ゆ、遊園地に行ってほしいんですっ!!!」

奴から発せられた単語に、暫く自身の脳が理解する事を拒みやがる…。
俺は頭痛を感じ、眉間に自身の指先で抑えながら声を絞り出す。

「……………………………んなもん…俺みたいのが今更行ってどうするっ!?」 

「大丈夫です!!ソルさん見た目若いですからっ!!!
それにっ皆さんそれぞれ楽しんでて、他人の事なんて見てませんっ!!」

「そりゃ俺やテメェがその場所に溶け込める要素があればの話だろうがっ!?
明らかに異質なモンは、意図的に見ようとしなくとも視界に入るもんだとテメェは知らねぇのか!!」

俺の言葉にエルフェルトは、うーん?と首をかしげ、指先を自身の顎に添えて、何やら考えこんでやがる。
コイツが考えてる事なんぞ、ろくでもねぇ事だろ。そんな事をなんとなしに思った。

「遊園地に溶け込める方法…ですか…?えーと…、どなたかのお子さんでも連れて行きます?
そうしたら、一応周りは私達の事“家族連れ”として認識してくれたりしそうですが…?」

「……、ハッ…テメェ、それをマジで言ってんのか…?確かにその場を誤魔化すにゃ最適かもしれねぇがな…。
俺もテメェも、存在を理解してる奴らにゃ“理解されている”っつう認識が足りてねぇ!」

「あ!ソルさんはそう言えば有名人でした!どなたかのお子さんなんて連れて行ったら大騒ぎにっ!?」

「俺はガキの頃のシン連れ回しまくってたからな。そいつは何も問題ねぇよ。
“テメェが子供(ガキ)を連れて歩いてた”ってだけで、カイ周辺以外の世界政府の奴等は恐れ慄きやがるだろ。
何処でどんな奴らが見てるかわからねぇしな…。」

「わ、私っ、そんなに認知されてるんですかっ!?」

「お前が慈悲無き啓示に連れ去られた後、テメェの情報を得る為に、全世界中の公僕に
お前の外見的特徴を公開したからな。だが流石に一般人には知らせてはねぇだろ。」

「ええええええっ!?な、なんて事してくれたんですかあっ!?
ど、道理で、なんか…イリュリア城で兵士さん達にやたら声かけられたりするんで…
てっきりモテ期が来たのかと思ったじゃないですかっ!!」

「……ああ…!?…エルフェルト……テメェ…、
他の野朗に愛想振りまくってやがるたぁ…。…わかってんだろうな…!?」

「ちっ…ちちちがいますって!!!?私が必死に運命の旦那様を探している時は、
大勢の殿方には逃げられたり振り向いて貰えなくて、婚活止めた途端色んな人に声かけられたり、
告白されたりして…。私の頑張りって、一体なんだったんだろうなぁ〜?って…。た、ただそれだけなんです!!」

「そんなん解りきってるじゃねぇか。男は追う生物。追っかけてくる女なんぞ、そりゃあ逃げるだろうが。」

「過去には、“草食系”って呼ばれる殿方達も生息していて、
だから、女の子から“あなたが好きです!”って言った方が良いって
雑誌に書いてあったのに!?!?」

「…違うな。テメェはそんな“なよなよ”した奴ら鼻っから相手にしてねぇよ。
…世界的有名デスメタルシンガー、老けた顔した第二連王、俺。
…他の手当り次第の奴らは知らねぇが…こいつらのどこに“草食”の要素がある?」

「……あの…えっと………。た、確かに…無いですね……?って!!レオさんは違いますよっ!?
食事一緒に行っただけですから!!未遂!!未遂ですっ!!
デスメタルシンガー……って、なんでっ!?ソルさんがそれを知ってるんですかああああああ!?!?」

「…テメェが産まれて間もなく、慈悲無き啓示の魂胆でイギリスの片田舎に住み活動してた事は、
テメェの行方を探してた時にとっくに調べ済みだ、その男にも事情聴取出来たしな。」

「…しっ、信じてもらえないかもしれませんがっ!!!
そ、その方ともっ!!わ、私はみっ…みみみ未遂ですからぁっ!!!」

「どうだかな。俺との初夜にテメェは出血しなかったしな。……ってのは冗談だ。
…その辺りの事も野郎は勝手にベラベラ喋りやがった。」

「えええええええっ!?」

「エルフェルト…テメェ、いい根性してやがる。男に擦り寄って身体を密着させながら、
肉体関係は籍を入れ式を挙げた後じゃねぇと嫌だと男に宣ってたらしいな。
…そりゃ、只の生き地獄にも程があるだろ。」

「…な、何がいけないんですかっ!?婚前交渉無しこそ!出来た乙女の嗜みなんです!!
だから私っ!結婚するまでは貞操は守るつもりだったんですよっ!!!
でも、ソルさんは全く私の話なんか聞いてなくて!!!…そ、それでっ!わ、私の…っ!!!!」

「…私の…何だ?」

「…っ、な、なんでもありませんーーーっ!!!!っ、というかっ!大体の殿方は私からのお願い、
キチンと聞いて叶えてくれてましたけどっ!!ソルさんは、私の話なんか全く聞いてなかったじゃないですかっ!!!」

「…そいつか…。どうやら、テメェには男を無尽蔵に骨抜きにしやがるフェロモン的なモンを
身体から常に発してるらしい。
だから野郎共はテメェに骨抜きにされてホイホイ言う事を聞いちまう。
俺やシンがそのフェロモンに充てられてねぇのは、ギアには効きにくいっつう理由か?
人間であるカイに効かねぇのは…あいつは元々どこかぶっ飛んでやがる。
木陰の君に充てられまくって、元々テメェのことなんぞ眼中に無いからだろ。」

「…なっ、なんとなく言葉の最後に悪意が含まれている気がするのは…気のせいですかね…???
…まあ、いいです。その情報は、…“お母さん”から聞いたんですか?
私も…自分で、なんとなしにそうなのかな?って思ってたので、ソルさんから聞いてとても納得してます。
…でも、肝心の、婚姻届の印を押す瞬間、皆さん何か覚醒しかのように目が冷めて、私の元から
逃げて行っちゃうんですよね…。
お母さんはそれは私の中の“防衛システム”って言ってましたけど…。」

「デスメタルシンガー、奴はなんでテメェから逃げなかった?」

「それは…婚姻届を結婚式で皆の前で書こうと約束してたからです。…あ!!」

「婚姻届にサインっつう一連の行動が、奴らの洗脳を解く説が有力だな。
奴と式を挙げ婚姻届にサインする前に、エルフェルト、お前の方に覚醒が起こっちまいテメェはその場から立ち去った。
だからか奴の洗脳は未だ解かれてねぇままだ。」

「……え!?それ…本当ですかっ!?」

「例の野郎に、胸ぐら捕まれテメェの居場所散々聞かれたからな。」

「あああああ!!わっ、私っ!?…知らなかったとはいえ、なんて事しちゃったのっ!?
…せめて彼に一言謝りに行かな………っ!!!?」

咄嗟にベッドから立ち上がろうとするエルフェルトの腕を掴み、此方に引き寄せる。

「…行かせるかよ。エルフェルト、俺を見ろ。」

「…そ、ソルさんっ…。」

「“此処は何処だ?”“テメェは何の為に此処に居る?”…言ってみろ。」

「…、わ、私は…、ソルさんに…助けて貰ってばっかで…
だからお礼がしたくて、そしたら…ソルさんは……、
わ…私を…だ、抱かせろ…って…。」

顔を赤くし、横に振り、顔を逸らすエルフェルトの顎を掴み、
視線を合わせる。

「…やれば出来るじゃねぇか。今からのお前の態度次第では、テメェの願いってヤツ、
明日にでも聞いてやっても構わねえ。…悪くねぇ取引だと思うがな。」

「…ほ、本当ですかっ!?…わ、わかりましたっ……、で、でも、
お、お手柔らかにお願いします……。」

「…上出来だ。」









◇◇◇◇◇

先程までずっとエルフェルトを散々ベッドに沈め、今やまともな思想ができそうもねぇコイツに、
耳元で次の指示を出していく。

俺の指示した通り、裸でベッドに四つん這いになり、グズグズでほぐれまくったマ○コを人差し指と中指で開け、
こちらに顔を向けながら、
「………入れて…下さい…。」と細く呟くエルフェルトは、
羞恥で首筋や耳が赤くなり、かすかに見える目元は、涙で溢れてやがった。

はじめは焦らすように己の雁の部分のみを奴の入り口に這わせ、
後ろから覆いかぶさり奴の両乳をもみしだけば、
あ♡あ…ああ…♡♡と微かな声を発し、フルフルと腰を震わせている。

「…ったく…、ダラダラ液こぼしやがって…。そんなに欲しいならテメェで入れるか?」

俺の言葉に「いやぁ…そんなの…!?」と、か細く抵抗するも、身体は先程散々与えられた
快感を求め、ず…ず…と、腰を俺の腰に近付ける。


「…結局全部テメェ一人で入れちまったじゃねぇか…。」

褒美とばかりに、薄桃色の髪に自身の指を入れ、梳くように優しく撫でれば、
中がきゅっと締り、奴の身体がブルッと震えたのを感じ取る。

「ソルさん…わたしのあたま…もっとたくさん撫でてくらさい…
ソルさんのてのひらきもちいいの…。」

俺の掌に顔を擦りつける為に此方に向けやがった表情は蕩けきり、思わず生唾を飲み込む。
俺のブツも見事に反応し膨張すれば、よりコイツの中の締め付けを感じ、思わず笑みを浮かべてしまう。


「…エルフェルト…髪を撫でるだけか?」

「……、…う…うしろからぎゅっとして…ください…っ」

「…ったく、まだ、あるんじゃねぇかよ。…だが悪いな、そいつは“コイツ”を
テメェん中で一度出してからだ。…それまで耐えきってみせろ…っ!」




 

 

 

 

 



◇◇◇◇◇



ったく…やけに眩しかったが…このせいかよ。

昨晩、カーテンなんぞ気にせず事を及んでいたからか、やたら大きい一枚硝子窓からガンガン入る朝日に
目を焼かれる…。

自身の右上腕筋に頭を乗せて寝こけるエルフェルトの髪を梳けば、
深夜のコイツの放った言葉と表情、醜態をまざまざと思い出し、思わず短い溜息が漏れた。

顔にかかった髪を払う。

少し腫れぼったく、腫れた瞼。

目元に付いていた溢れきっていなかった液体を
親指でそっと撫でる。

子供(ガキ)な癖して、妙に此方の確信ついた劣情の煽り方をしてきやがる…。
寝返りをうった奴の首筋は、俺がつけた噛み跡、口付で鬱血した跡が、朝日によって鮮明に映し出された。

………。

……こいつは暫くこのままだろ。
さっさとシャワーで熱い湯でも浴びるか。

己が今感じたモンを否定するように、
ベッドから立ち上がり、シャワールームに向かった。





◇◇◇◇◇





えっと…、…あれ……?

ベッドから身体を起こせば、なんとなしに身体が怠い…。

一緒にベッドに入った人は、この部屋からはとっくに姿が見えない。
シャワーかと思って、目を細めてパウダールーム兼バスルームの入り口を見てみても、
誰の気配も感じなくて、私は思わず首をひねってしまう。

とりあえず探してみようとベッドから立ち上がると、
日差しにまざまざと照らされた全身の事後の跡が鮮明に視界に入り、心の中でうああああああ!?と叫んでしまう。

えっ!?……これっ!?ちょっとした惨事ですって!?!?

知らない人が見たら、虐待と勘違いされそうな程、
身体につけられた跡に、頬がどんどん熱くなってきてしまう。

「…しかも…所々歯型って……。」

私…別に噛まれるの痛いから好きじゃないのに………。

ふと脳内で甦った、ソルさんから激しく中を攻められながら脚を持ち上げられ、
イく瞬間に足首を噛み付かれて、痛くて叫んだのか気持ち良すぎて叫んだのかわからなくなって、
結局全部気持ち良いよう!もっともっとって頭がおかしくなって、そこから記憶が曖昧で覚えてな……

…………お、覚えてないって!?

えええええ!?!?

とりあえず、私は慌ててシャワールームに駆け込んだ。




◇◇◇◇◇




さっぱりしたなぁ。そんな面持ちでバスローブを羽織りシャワールームを出れば、
既にGパンのみ着用し、ミネラルウォーターを片手に濡れた頭をタオルでゴシゴシと水分を拭き取っている
ソルさんと目が合う。

「…わひゃあっ!?」

思わずびっくりして、慌ててバスローブのクロス部分をぎゅっと閉じて
手で隠して後ろを向いてしまう。

「…何やってやがる。俺が付けた跡を俺が忘れる訳無ぇだろうが。」

呆れた溜息に、それは…そうですけどっ!!
とつい反論してしまう。

「どうしてくれるんですかっ!胸の開いたお洋服とか、背中開いたお洋服とか!
暫く着れなくなっちゃったじゃないですかぁあああ!!!」

「テメェみたいな子供(ガキ)がそんなもん着てるんじゃねぇよ!」

「……もうっ!!また私の事子供扱いして!!…………………って、あっ!
私っ!ソルさんの“ソレ”の本当の意味!今ならキチンと理解出来ますよっ!!
…えっと…コホン!
“エルフェルト、お前の素肌を他の奴に見せるんじゃねぇ!”こんな感じですよね?
もぉ~ソルさんてば!それならもっと素直にそう言っちゃってもいいのになぁ~?
まったく…恥ずかしがりやさんなんだか…」

「言っていいのか?」

「へっ?」

「だったら、さっさとテメェをイリュリア城の俺の部屋に閉じ込め、他の野郎共には一切目に触れさせねぇようにするか。
…その場合、ラムレザル、カイの連れ、ジャック・オーくらいにゃ会わせてやる。」

「…え?あ、あの、えっと…??」

「俺が居ねぇ時も勝手に外に出る事は許さねぇ。俺が帰って着た時はテメェは何時もの通りに俺を出迎えろ。
外出してぇ時は俺に頼め。俺が必ず同行してやる。…こんなもんか?」

「あ…あの…っ!?」

「どうだ…?人権団体から今すぐにでもヘヴィな批判が飛んできそうな内容じゃねぇか?
で、俺がそいつらにこう言う。“こいつは人じゃねぇ。バケモンだ。”ってな。」

「………わ、私…っ、ソルさんがそう望むなら…そうして貰っても全然構いませんよ?
そりゃあ…お外出れないのは、ちょっと悲しいですが…ラムとディズィーさんとアリアさんに会えるんなら、
そんなに寂しくなさそうですし…。ソルさんがそれで幸せ感じるのなら…それでも…良…………
痛ぁっ!!!な、なにするんですかぁああ!?!?」

「テメェが変な思考し出すから叩いただけだ。」

「酷いっ!!…もっ、元々はソルさんが言い出した事じゃないですかあっ!?」

「俺が素直になればろくなもんじゃねぇ。エルフェルト、お前に分からす為の例え話だろうが。」

「だったらっ!先に例え話って言って下さいよっ!!…全くソルさんは…っ!!言葉が足りないんですっ!!
察しろとか!私はアリアさんじゃないので無理です!!ちゃんと言葉として伝えて下さいっ!!」

「…ったく、面倒くせぇな…。」







◇◇◇◇◇

ソルさんがいつの間にか頼んでいた、ルームサービスの朝ご飯。

これぞプロが焼いた至高の味のオムレツを堪能しつつ、向かい合わせに座ってる人の事を垣間見れば、
(生クリームと卵の絶妙な割合と、ほんの少しだけまぶしてあるトリュフの香りが美味し過ぎるっ!!)
ソルさんは、何やら法力端末で
情勢のニュース記事を見ながら、私が座っている椅子の向かいの席で
器用にフォークとナイフを使って食べている。

「…ソルさんてば、フォークとナイフの使い方とても綺麗ですよね…?…
なんか、ソルさんの性格とか、これまでの人生とか聞いていた内容から思えば、
なんか…意外というか…。」

「…さぁな、いつか覚えたんだろ。」

記憶は無いとさらっと返事され、私はちょっとだけムキになって言い返した。

「そんな筈ありません!誰かに正しい使い方をきちんと教えて貰わないとそんなに綺麗に使える筈ないです!
ずっと女子力向上の為に通ってたマナー教室の先生もそう仰ってました!」

「…んな遥か昔の事なんぞもはや忘れちまった。」

「………………そうですか…、もしかしたら…、ソルさんのご両親の事とか…聞けるかなぁ?
なんて思いましたが…。私…欲張り過ぎちゃいましたね。…気にしないでください。」

自身が持ってたナイフとフォークを置いて、ティーカップに口をつけながら、
ちょっと意気消沈しつつ呟けば、何故か眉をひそめられる。

「……急にどうした?」

「あ!いえ…!ほんとなんでもないんです!!」

慌てて両手をブンブン降る私に、訝しげな視線を向けてきたソルさんは、
いかにも面倒だと言ってるような短い溜息をついた。

「ったく…。テメェの“なんでもない”程、信用出来ねぇモノも無ぇな。
…良いから言え。後々の面倒事は勘弁しろ。」

「い、いえいえっ!ホントなんでもないんですってば!!」

「そいつは俺が判断する事だ。お前が決める事じゃねぇ。」

「なっ!?…相変わらず横暴ですよ!!…そ、そしたら!?言いますけどっ!?
言ってから怒るとか…絶対無しですからねっ!!!

私…ソルさんの過去の事、…知らない事ばっかりで…、好きな人の事なのに全然知らない事が悔しくて、
ほんの少しで良いからあなたの事知りたいな…って思っただけですってばっ!!!
ほら!だからなんでもないって言ったじゃないですかっ!!!」

言葉を発した後、恥ずかしくて頬がひたすら熱くて、
丁度自分の食事が終わったタイミングだからと
足早にダイニングから出ようとしたら、後ろから腕を掴まれる。

「な、ななんですかっ!?」

私の上擦った声に、落ち着けと苦笑いするソルさん。私は思わず、これが落ち着いてられますかあっ!?と
その場でつい叫んでしまう。

「エルフェルト、俺の方を向け。」

「?…は、はい………えっ!?」

腕を引っ張られた反動で、いつの間にか椅子から立っていたソルさんの身体の懐に
すっぽりと自分が収まる。

あ…えっと…?

ワシワシと頭を撫で擦られ、せっかく整えた髪型がぐしゃぐしゃにされて、
何するんですかっ!!と訴えても、ソルさんは素知らぬ顔。

涙目で髪型がぁあ!?と睨んで訴えたら、私の顎を掴まれ、軽く触れるだけの口付をされる。

あまりの突然の事に呆けていれば、いつの間にか引き寄せられた腕を呆気なく離され、
ソルさんは何事も無かったかのように椅子に座り直し、また法力端末の方に視線を向ける。

「…そ、ソルさんっ!?と、唐突にどうしたんですかっ!?」

ぐしゃぐしゃになった髪を自分の指で整えながら、質問すれば、
エルフェルト、お前こそ外に用事があったんじゃなかったのかと聞かれて、
そ、それどころじゃないですよ!!と必死に訴えた。

でも、此方から何を聞いても、聞くなの一点張り。
私はちょっとむくれて、ソルさんをじっと見つめる…。


「…テメェ…見てんじゃねぇよ…。」

少し眉を潜めて、私の視線から顔をそらす目の前の人の膝の上に、
ちょっとした出来心で自身の腰を下ろしてみる。

心底嫌がられて直ぐ降ろされるかもって覚悟してたけど、軽く舌打ちされただけで、
そのまま座らせてくれる様子だったから、私は素直に甘える事にした。
私はソルさんの身体に寄りかかり、胸板に自分の頬をくっつけて、少しだけ甘えるようにスリスリした。

…あ、ソルさんの匂いがする。

いつもこの匂いに包まれるのは、最中の時くらいだったから、
少しだけ変に意識して、心臓がドキドキする。

暫くは、ソルさんが見ていた端末を一緒に見たりして、質問して答えを聞いても、
余り構って貰えなくて私はちょっとふてくされて、
ふと、上を見上げて、端末に視線を向けてるソルさんの顔を覗き込むと、
少しだけ蒸気した肌と、明らかに赤くなってる耳元に、見間違いかな?と思わずじっと見つめてしまう。

手を伸ばして、頬に触れてみる…。

あ、ちょっと暖かいかも…。

私がここまでしたら、普段ならソルさんから何らかしらの言葉とかが来るんだけど、
今はなんだか様子が変で、私は脳内にクエッションマークを沢山浮かべながら、
赤くなってる耳朶をつまんで、ソルさんの表情をまた、じっと見つめてみる。

明らかに視線が反らされてる…。

それどころか眉を潜めて、舌打ちをされてしまう。

さっきは、私にしつこく聞いてきたのにっ…、
ほんとに…横暴ですよ…この人はっ…。

そんな人には、こうしてやりますっ!!!

えいっ!!!

自身の左手をソルさんの右頬に添えて、少し背筋を伸ばして、
彼の唇に自分の口を押し当てるようにキスをした。

さっきのソルさんからされたモノの仕返し的な気持ちあったけど、
成功してちょっと嬉しくなった私は、何も言われない事をいい事に、唇は勿論、頬や顎や、耳近くに自分の唇を押し当てたり…。

ソルさんとこんな軽いスキンシップってした事なくて、とても嬉しくてつい調子に乗ってしまう。

もう一度、軽く唇を啄むようなバードキスをしようとソルさんの顔に自分の顔を近づけようとしたら、
突然顎を掴まれて、無理矢理口を開けられて舌を吸われて、
思わず私の身体がビクっと大きく跳ねてしまって、思わず涙目になってしまう。

あ…♡ああ…やだぁ、それは…ダメ…!
きもちいいん…んっ…んあっ…♡

じゅるじゅると舌を吸われ、身体全体がゾクゾクしてくる…。

思い切り激しくディープキスされながら、私の顎を掴んでいた手はいつの間にか私の頭を髪を梳くように撫でさすられ、
空いた腕で私の肩を抱いて引き寄せられる。
いつものソルさんなら、絶対にしないような事をされて、どぎまぎしてしまう。

離れた互いの唇、互いの舌から繋がる唾液の糸。
なんだかいつもと様子が違うソルさんの視線に、私は目を反らす事が出来なくて、暫く無言のまま見つめ合う。

「…ソルさん…?…あ、あの…?」


呼びかけに無反応なまま、いきなり身体を持ち上げられて、ダイニングを出てリビングを突っ切り、
ベッドルームに連れて来られたと思ったら流れるようにベッドに降ろされ、
お、押し倒されるの!?このままなし崩し!?って覚悟したら、
予想を反して、優しく身体を引き寄せられて、かえってびっくりしてしまう。

「そ、ソルさんっ!!…一体!?…ど、どどどうしたんですかっ!?
…な、何か、私っ…変な事しました!?」

慌てて顔を覗き込むと、やっぱり視線を合わせてくれなくて、無理矢理覗き込んでみても、
あからさまに反らされるから、流石の私もちょっと気分を害してしまう。

「…なんでっ…私の顔を見てくれないんですかっ…。私の事…嫌いになったんですか…?
でも、触れるのは拒否されないし…、もう…!一体なんなんですかっ!!!訳わからないですよっ!!」

涙目でソルさんを睨んだら、やっと視線を合わせてくれたけど、
あきらかにバツが悪い顔をしてて、私までどぎまぎしてしまう…。

そ、それに…よ、よく見たら、やっぱり…、

「…ソルさんの頬や…耳元、赤いです…。」

私の言葉に、一度舌打ちして「黙ってろ。」と眉をひそめるソルさんに、私も今きっと赤いですからお揃いですね?と呟けば、
ソルさんのいつもと口癖である、“ヘヴィだぜ…。”と聞こえてきて、なんでですか…私とお揃いは不服ですか?
相変わらずソルさんは失礼ですよと笑ってしまう。


「エルフェルト…テメェ…後で覚えておけ。」

「…そんなの…保証できません…。だって、私…、ソルさんとエッチした後って…
ほとんどの記憶飛んじゃってるんですもん…。」

ソルさんに押し倒されて、私の頬に触れている手にそっと自身の指先で触れながら、
頬に触れている掌にスリスリして、チュっと、触れるくらいのキスをする。

「……ソルさんの匂い…良い匂い…。とても好き……。」

掌ですらも、ソルさんの匂いがして、だんだん変な気持ちになってくる…。

「……エルフェルト…テメェはいいから黙ってろ…っ
“生”で挿れたくなる………。」

言われた意味に初めはちょっと理解出来なくて、疑問視してしまったけど、
よくよく考えたらとんでもない事言われていて、顔がみるみる熱くなってくるのを感じ取る…。

「…そ、そんなの…っ、ダメ…!だって…!!」

「…そうだ…判ってんじゃねえか。だったら理解出来るな?
…いいからお前はもう何も語るな!……これ以上俺を煽ってんじゃねぇ!!
お前の中無理矢理ブッ刺し、狂うまで散々攻め立て、俺の種でテメェを孕むまで中に出してぇ………!…そう…思っちまうだろうが…ッ!」


そのあまりの言葉に驚き過ぎて…混乱する私の頬を撫でるソルさんの手付きは、
いつもより優しくて、あまりに優しすぎて…。

…私だってっ!!貴方との赤ちゃんが欲しい…!!

そんな言葉を喉元まで出掛かりそうになって、必死に私は…ギュっと目を瞑った。

今…その言葉を伝えたら、きっと私達は取り返しの付かない事になる…。そんな予感がしたから…。










◇◇◇◇◇


「ソルさんの馬鹿ぁあああ!!!」


私は涙目でソルさんの胸板をぽかすか叩く。
そんな私の様子にソルさんといえば、何も言い返さずバツが悪そうに顔を反らしたまま。

朝食を食べた後、そんな雰囲気になって、ベッドになだれ込んで、
気がついたらいつの間にか、もうお昼の時間に差し掛かっていて…。


そ、そこまでは仕方が無いの、…仕方がないけど………。

この仕打ちは酷いっ!!!

せっかくっ!デートの為に新調したお気に入りのお洋服が、もはや再起不能の状態になってた事に私は憤りを隠せない。
胸元のボタンは無理矢理引っ張られたからか、何個かはじけ飛んで、その何個かのボタンはもうどこにも見つからない。

スカートは……、染みが沢山あったり、皺が思いっきりついたりしてて…、

た、確かに…ソルさんも私も…、なんかわかんないけど、いつもの最中より冷静さが無かったというか…っ、
変に二人して盛り上がってた…というかっ!!

ソルさんはあんまり、私に服着せられたままするとかあんまり無くて、寧ろ、裸の方が好きなのかな?って思ってたんだけど、

よっぽど切羽詰まってたのか、脱がされる事なくどんどん事が進んでしまって、

私もそんな切羽詰まったソルさんの様子に興奮してしまって、服の事なんて…全然……考える事しなかった……っ……、。

不幸中の幸いだったのは、今日は久しぶりにガーターベルトでタイツ履いていたから、タイツが破られる事は無かったって事…だけかも……。
でも、そのせいで、ショーツもタイツも脱がされる事無く身に着けたまましちゃったから、案の定、全部ぐしょぐしょになってしまったけど……。

とりあえず、汚れた部分は自分で洗える範囲で洗って、クリーニングに出して貰うようにして、
ボタンに関しては、清掃の方に見つけたら捨てないで下さいとメモを置いて、普段より多めのチップを一緒に挟んでおく。


とりあえずトランクに入れていた代わりの洋服を取りだせば、見事に後ろの背中が丸見えなワンピースやトップスばかりで、

背中に付けられた跡を思い出して困り果ててしまう。

背中はファンデ一人じゃ塗れないし…。
ソルさんが、ファンデ塗ってくれるとも思えないし…。

ソルさんの性格を考えたら、
寧ろ、態と…私の首裏や背中に沢山跡付けてる可能性の方が…高いのかなぁ………。
そんな事をふと考えてしまって、顔がやたら熱くなる…。

一応念の為にと持ってきてた、ディズィーさんが用意してくれた、ラムとお揃いの白いワンピースを取り出して、
これだと首元も背中も全部隠れるから、今日はこっちを着ようと決心をする。

準備した洋服を着て、バックの中からお化粧ポーチを出して、ベッドルームにあるお化粧台の椅子に腰掛けて、目の前の鏡と向き合う。

せっかく、彼に合わせた大人っぽくてセクシーになれる様な洋服…沢山持って来たのにな…。

自分の肌色に合わせた薄桃色の口紅を塗りながら、私はちょっと悔しくて溜息をついた。


あれ……?それにしても…ソルさん、シャワー遅いなぁ…。
いつもとても早いのに…。

まさか倒れてたり!?

いやいやまさか!ソルさんに限ってそんな事…!


私はちょっとだけ不安になり、慌ててパウダールームの扉をノックして、扉のノブを掴んで回してみる…。

あ、まだ此処には居ないみたい。

という事は、まだ浴びてるのかな?

カーテン越しにあるバスタブが置いてあるパウダールームの奥にガラスの仕切りの奥にシャワーが設置してあって、

ソルさんがシャワー。浴びてる音がしてるから、私は、そっとカーテンをずらしてシャワールームの方に脚を運んでみる…。

曇ったガラス越しにソルさんの全身のシルエットを垣間見て、ドキドキしてしまい、わ、私何やってるの!?

これじゃまるで覗きじゃない!?と自分で自分をツッコんでしまう。

ソルさんは無事みたいだし、とりあえず部屋に戻ろうと引き換えそうとすれば、

後ろから水気を帯びた足音がしてちょっとびっくりしてパウダールームの外のカーテンの外に慌てて駆け出した。

「…ご、ごめんなさいっ!!そのっ!!ソルさんがなかなかシャワーから出られないからっ!つい心配で………!」

声をかけても、ソルさんから何も反応が無いから、私はどうすればいいのかわからなくなって、

あ、えっと…その…っ!と口をモゴモゴさせてしまう。

カーテンの奥から聞こえる頭をタオルで擦る音…。
腰にバスタオルを巻いてカーテンから出てきたソルさんは、
昨日とは打って変わって、さっき目が冷めてからずっと心此処に有らずって様子で、私は思わず、「大丈夫ですか…?」と声をかけた。

「…ああ?」

「…具合…悪かったりとかしないですか…?」

ソルさんの私をずっと見つめてくる視線…。

昨日のギラギラした視線とかではなくて、少し戸惑ったような…何故か不安げに見つめてくる視線に、私もちょっとばかし戸惑ってしまう。

「あ、あの…!今日!一緒に出かけて欲しいって、言ってた事ですが…、ソルさんの具合が良くなさそうなので…今日はやめときましょうか?」

明らかに昨日とは態度が違うから、体調が心配で、そう声掛けすれば、

「あ?何抜かしやがる。さっさと行くぞ。」

そう言い切った後、まるで何か火がついたように動き出して、パウダールームを出た後ソルさんは直ぐ様自身の服を身に纏い、

あっという間に支度して、スタスタとベッドルームの扉を開けて出てってしまう。

「…え!?…ちょっ!?だ、大丈夫なんですかぁああ!?」


私はその後ろ姿を慌てて追いかけて行った…。





◇◇◇◇◇



その後、ソルさんは、私が行きたいと言っていた場所に、行ける範囲ならどこでも連れて行ってくれたり、 
私がやりたい事とかいやいやながらも付き合ってくれたりして、
(常に眉間に皺を寄ってたりしましたが)

アリアさんの言った通り、ソルさんなりに、私の事を想ってくれてたのかな?とか感じて…

私は、前々から心に抱いていた事を、ソルさんに伝えよう。そう思った。



帰りのバイクに乗る際に、ソルさんの背中にしがみつく。そのタイミングで、私は、勇気を出して伝えてみる。


「ソルさん?…、今日は本当にありがとうございました!とても楽しかったです…。
…あの…これが、最後のお願いなんですが…。」

私の口ぶりに、眉を潜め、私の方に振り向く視線に目を合わせながら、ちょっと背伸びをして、

彼の耳元で、その“お願い”をくちづさむようにつぶやいた。

少し驚いた表情と、その際に見開かれた目…。

私は、ドキドキしながら返事を待てば、彼からの、すぐ様の否定の言葉…。

どうして…と無意識に呟いた私の言葉に、

その理由はいかにも彼らしくて合理的で、それゆえに、取り繕う隙間が無くて…私は言葉を失ってしまう…。

まるでそれは、私との関係は“そんなもん”だと、“勘違いするな”と、彼から言われてるようだった…。

 

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