DORAGON
DOES
HISUTMOST
TO HUNT
RABBITS
D
oragon
rabbits
&
R
不純な動機が常識を覆す。
R-18
「…?…おや…?貴方は…。…珍しいですね?こんな場所で遭遇するとは…。」
「…ちっ、テメェ…。」
「ふむふむ、ここに積まれてる本は、全て生物学や細胞学の専門書ばかりですが……。何かご自身の体調の変化でもお有りですか?」
「…テメェには一切関係ねぇ事だ。」
「それはそうでしょうが…貴方の体調の変異は、世界の急変と言い換えても大げさでは無いのですよ。
…もし、何か気にかかる事がございましたら、このファウスト、協力は惜しみませんよ。
貴方にそれくらいの事をさせて貰っても、世界を救ったお礼に対してはまだまだ足りませんからね。」
「いいから失せろっ!…此処で見た事は此処から去った後すぐに忘れろ。一切口出しするな…っ!」
「…貴方がそれほどまでに取り乱すとはただ事ではありませんね。ちょっとそちらのレポート見せて下さい。」
「…テメェっ!!!?」
「うわっと!!…此処は仮にも王立図書館、大声出したり、暴れたりはご法度です。
いくら貴方といえども、連王権限で出禁にされちゃいますよ?
…ふむふむ………、えーと、どれどれ…?
“ミクロ細胞を少ない法力エネルギーでいかに分別しそれを遮るか”
“人体の中にて法力を発動する為の法力陣のコントロール方法”
“自身が快感によって理性を失いかける瞬間に、法力陣のコントロールは可能か否か”
“形成された法力陣は女性の膣内で長時間維持されるのか否か、維持されない場合の対処方法”
…………えーと、あの、コレは…。法力によって避妊出来るかの研究レポートとお見受けしますが………、間違いありませんかね?
に、しても…酔狂過ぎるにも程がありますよ。人の欲望とは無限にて、勿論この分野の法力研究は今でも盛んに行われておりますが、
未だに誰一人として避妊具を超える確実な避妊が行える法力というモノは見つかっておりません。
ギアメーカー程の法力知識と技術がある方ならば、容易にその方法を編み出せそうですが、
彼はそもそもこういった現世の宣い事には興味は無さそうですし…。
ですが、意外ですね。力学法力や機械法力が専門とお見受けしてた貴方が、ここまで生物学の知識もお有りだったとは。」
「ちっ、…」
「…それに、これを軽く見ただけでも時間と労働のバランスが取れてませんね。これなら、避妊具を使用した方がまだ効率が良いですよ?
…まあ、何か深いお考えがあるようですから止めはしませんが…。」
「…俺は世界を転々としてる。避妊具なんぞ買いに行く暇すらねぇ。
それにあんなもん使わねぇ時は邪魔くせぇし、いざ使うってなればすぐ尽きちまうからな。」
「なるほど…それほどの性欲…いや、ギア細胞によるあらゆる飢えによる侵食が原因って事でしょうか…。
前の貴方は、噂によればギアは勿論、犯罪者といえども相当の人間を葬っている筈…。
人を殺す事を見知った者は、その快感に溺れてしまう事が多い。それこそ性行為なんぞ目にも入らない程に…。
貴方もてっきりその類の者かと色んな噂にて感じていたのですが、
…“何か”が貴方を引き戻し、貴方の手を救いたがっている。……。解りました。このファウスト、貴方のこの研究、協力は惜しみませんよ!
細胞法力学に置いては、私の右に出る者はそうなかなか居ませんからね!」
「テメェ…何勝手に話も進めてやがっ!?」
「サッとこのレポートを拝見すれば、理論上はこれで正しいのですが、これでは上手く作動しませんよ?何より人体への影響が著しい。
相手の方がどのような方なのかは知る由もありませんが、お相手も貴方並みの耐久性がある方じゃないと、
この理論だと下手したらすぐ死んじゃいますね。」
「……確かにこりゃあ無事で済む筈はねぇな…。」
「どのような方であれ、相手は女性です。怪我させたりはしないような方法を模索しましょう。」
「…面倒くせぇな。」
「あれ…?それともお相手は男性ですか?…それならそもそも避妊する必要性は無いですが…、
…まあ、病気をうつされる事を避ける法力研究を…」
「…んなわけあるかっ!!相手は女だっ!…ただ、人間って訳じゃねぇ…。多少は無理が効くだろ…。」
「しかし…貴方の大切な方ではありませんか?
…大切じゃなかったら、粗暴と噂される貴方が、これ程までにこの研究に没頭する筈は無いでしょう。」
「…ちっ、…。」
「…良いですね…。実に良いです…!貴方がそのような表情を浮かべられるとは…。
貴方をその様に変化させた方を知りたい欲求が湧いてきますが、それは貴方の為に聞かないでおく事にしましょう。」
「…そいつが賢明だ。俺はテメェを焼く事に躊躇はねぇからな。」
「全く…恐ろしいですねぇ。
それではとりあえず、暫くは此処の王立図書館でおちあいましょう。
初めは理論形成が要ですからね。実用検証は、貴方からの指定の場所がなければ、後日、私から場所を指定します。
…私の連絡先は…と。こちらなら確実に繋がります。わからなくなりましたら、第一連王やその奥方に聞いてみて下さい。
お二人共知ってる筈です。…それでは、これにて失礼!!」
◇◇◇◇◇
「…やりましたね!!ついにやりましたよ!!」
「…ダミーでの研究では、これで完成形か…。後は実践検証だけだが…。」
「実践検証は、流石に私の出る幕は無さそうですから、ここいらでお暇させて頂きますよ。」
「…最後に答えろ。…何故テメェは、テメェが身にも金にもならねぇ事に首を突っ込んだ。」
「十分身にはなってますよ。貴方の変化する姿を見てるのは十分な価値です。
おや?…その表情は不服ですかね?解りました。それでしたら一つだけ。
…貴方の大切なお相手の方を教えて下さい。これで貸し借りは無しという事で。」
「…ったく、結局随分デけぇもん要求してんじゃねぇか。…実践検証が必要だからな、もうすぐ此処の場所に来るだろ。
知りてぇんなら暫く待ってろ、会わせてやる。…というか、テメェも何度か会ってる筈なんだがな。」
「まあ、知り合いだとは予測出来てましたが…、ほら!好奇心というのは猫をも殺すと言うじゃありませんか。」
「好奇心でバーベキューにされる確率高いもんに安易にクビ突っ込むテメェはまさしくクレイジーだぜ。」
「あはは、よく言われます。」
「ん?法力通信か、ちょっと待ってろ。
…おい、なんだ?どうした?………あ!?迷子になっただと!?…今何処に居やがる。
ああ!?そこまで来てるならもう目と鼻の先だろうがっ!!!
…ったく、いいか!そこから動くんじゃねぇぞ!じっとしてろ!今…迎えに行ってやる。
…という訳だ。すまねえが、テメェは此処で待ってろ。…ったく…。メンドクセぇな…。」
「…はい、了解しましたよ。
……なんだかんだ言って、彼は面倒見が良いんですよねぇ。…今回の件でそれがよく解りましたよ…。」
◇◇◇◇◇
「迷子迷子って!!!そ、そんなに何度も言わなくったっていいじゃないですかー!!
…だってそもそも此処の場所わかりにくいんですよっ!!ってソルさんはまた私の話聞いてませんねっ!!!」
「……聞いてるぞ、迷子が迷子じゃねぇって主張しまくってるってな。」
「…だからっ!またソルさんはー!?…って…あれ?誰か先にいらしてたんですか?」
「ああ、先客だ。…テメェに会いたいんだとよ。」
「わ、私に!?な、なんで、またそんな…。お、男の方ですか?」
「…あんなもんが女だった日にゃ俺は速攻焼き払うがな。」
「わ、私っ!?やっぱり婚活しない方が…かえって殿方にモテる法則がっ!?」
「ハッ…それをソイツの前で言ってみろ。もれなく鼻で笑われるぜ。」
「…その前にソルさん、私が貴方に焼かれるのが先でしょうか。
…お久しぶりです、エルフェルトさん。あれから体調が幾分良くなられたようで。」
「ふぁ、ファウスト先生っ!?……うわわわ!お、お久しぶりですっ!!
その節は本当にお世話になりましたっ!あの後お礼言えてなくて本当にごめんなさいっ!」
「いいのですよ。あの時は、なにぶん私は殆ど何もできなかったですからね。
こうして貴方の元気な姿を拝見出来ただけで十分ですよ。」
「でもどうしてファウスト先生がソルさんと…?お二人はお友達だったんですか…?
でも、ソルさんにお友達って珍しいですよね?…せ、先生?もしかしてソルさんに何か脅されてたりしてません…?
カイさんに相談すればなんとかしてくれますよ?」
「…エルフェルト、テメェ、良い度胸じゃねぇか。」
「いえいえ、私が勝手に彼の研究に付き合わさせて貰っていたのですよ。」
「研究…ですか?…あ、最近ずっとソルさんが、寝る間も食べる間惜しんで没頭していたアレですか?」
「そう、“それ”です。…彼はなかなか面白い方ですね。前はただ単に彼は生粋の戦闘狂だとお見受けしていたのですが…、
視野が広く機転も効く。これなら立派に研究者として生きていけそうですよ。」
「あ、そっか!ファウスト先生は知らなかったんですね!ソルさんは…」
「エルフェルトッ!!…やめろっ!その先は言うんじゃねぇ!!!」
「…いや…なるほど…。貴方達の口振りで、ソルさんが知られたくないモノもなんとなく察する事ができましたが、
私はまだまだ焼かれたくないので、ここらで失礼させて頂きますよ。
ほら!紙袋は良く燃えちゃいますから!」
「あ、お見送りを…!」
「いえいえお構いなく!…此処の窓までで十分です!…それではまた!お二人ともご達者でー!!!」
「…ったく、エルフェルト…テメェはよ…。」
「…ごめんなさい。やっぱり、まだ触れられたくはないんですか…?」
「…あたりまえだ。…あの頃の己なんぞ何度ぶっ殺しても足りねぇ。」
「でも…っ!……あの頃が一番楽しかったってジャック・オーさんが…っ。……、あ、私ったらまた…。」
「ちっ…まあいい。…テメェを怒鳴り散らしたところで…ジャック・オーから筒抜けやがるからな…。
アイツから他に何聞いてんだか知らねぇが、誰彼構わずペラペラ喋るんじゃねぇよ。」
「…ご、ごめんなさい…。」
「…まあ、奴にはほぼバレちまったみてぇだが、俺が今回やった研究はもろ専門じゃねぇと知ってる筈もねぇ事だしな。」
「あの、ソルさん?その行ってた研究ってなんなんですか?…私の協力が必要って…?」
「…随分と急からせやがんな。とりあえずそりゃ後だ。…先にメシにするぞ。」
「…え、ええ!?、先に何をするのか教えてくれたっていいじゃないですかっ!?」
◇◇◇◇◇
最近此処らで見つけた飯がソコソコ美味い隠れ家的なバーで、適当に食いもんと酒をマスターらしきおっさんに注文し、席についた。
エルフェルト、コイツは良くも悪くも人目を引く。特にこんなむさい野郎の巣窟ともなれば、
コイツが店に足を踏み入れただけで、野郎共の口笛が何処かしらから飛んできやがる。
初めの頃は慣れないその音に戸惑いやがってたみてぇだが、最近は、専ら俺の腕を掴み店に入る癖をつけやがった。
「だって、そうした方が絡まれなくて楽なんですもん。」
ステーキを丁寧に手早く切り口に運びながら、いけしゃあしゃあと語るエルフェルトに、
テメェも段々スレてきやがったな。と呟けば、誰のせいですか!誰のっ!と返して来やがる。
「もう、いい加減教えてくれたっていいじゃないですか!?一体何の研究してて、私に何をさせたいんですかっ!!」
「…なんてことはねぇよ。“男のロマン”ってやつだ。…俺にとっちゃ、割と死活問題だったんだがな。」
「…男のロマン…?ですか…?…そ、…ソルさん?何か変なモノ食べました…?
ソルさんからロマンって言葉が出て来るなんて…っ!!!」
「…エルフェルト、お前も段々いい性格になって来やがったじゃねぇか。
…あくまでも統計学的な言い回しだ。…ロマンなんぞ確かに俺は知ったこっちゃねぇがな。」
「えええええっ!?…そ、それって…!?それって…つまり…避妊具つけないで私とエッチしようって事…ですよね…??」
エルフェルトが驚き過ぎてあっぴろげに語った内容が内容だからか、周りで酒をかっくらっていた野郎共が酒を吹き出し、
一斉に此方に視線を向けやがる。
殺気含めたガン付けで返せば、何事もなかったかのように、奴らは俺から視線を反らした。
「…エルフェルト、テメェ、そりゃ態とか?」
「……え?…あっ!?…ああああーーー!!わ、私っ!?公共の場でなんてはしたない事をっ!?
そ、そもそもですよっ!!ソルさんがっ!!こんな場所でそんな事説明するからっ!!!」
「ああ!?テメェがさっさと説明しろと俺にしつこく宣ったからじゃねぇか。
俺はアジトに戻ってから事細かに説明するつもりだったんだがな。」
「だ、だったら!!さっさとご飯食べて、早く戻りましょうよっ!!
さ、さっきっから、周りの殿方に変な視線向けられてジロジロ見られてるんですよおおおっ!!!」
頬を赤くして、周りを気にして慌てまくるエルフェルトに、俺はエールを煽り、豚とハーブの腸詰めをつまみながら、溜息をついた。
「そりゃ俺の責任じゃねぇだろ。自業自得って奴だ。…ま、だが、確かにいい気はしねぇ。食ったらさっさと行くぞ。」
エルフェルトが飯を食い終わったのを見計らってから俺は席を立ち、会計の為にカウンターに居る親父に声をかける。
何やら騒がしたな。つりは入らねぇと言付け、先程まで己が座っていた席を見つめれば、
周りの野次馬にからかわれ顔を赤くし、涙目で必死に言い返しているエルフェルトの姿が視界に入り、思わず吹き出してしまう。
「お嬢ちゃん、まぁ頑張れや!」
「お嬢ちゃんにあの野郎満足させられんのか?」
「いや、違うだろ?寧ろお嬢ちゃんみたいのがあの野郎は良いんだろ?」
「それにしてもあの野郎凄え体格だぜ!奴のイチモツお嬢ちゃんのマ○コに入るのか?」
「もうただならぬ仲なんだろ?」
「おぼこく見えて、もう男を知ってるのかよ!エロいなぁ」
「まぁ案外お嬢ちゃんみたいな子の方がバリバリ開発されててエロいって法則あるぜ?」
「そのおっぱい、あの男に育てて貰ったのか?」
「マ○コの最奥激しくチ○コで突っ込まれ、乳や乳○弄られながら中イキすれば、女の乳は育つらしいぜ?」
「そのおっぱい大切にしろよ?なかなかここまでのモン持ってる女は他には居ないからな!お嬢ちゃんの立派な武器ってやつだ!」
「なっ、なんなんですかっ!?その発言全てセクハラですっ!!!聞いてますかっ!?
ですからっそれはっセクシャルハラスメントなんですっ!!!聞いてますかぁぁあっ!!?」
エルフェルト、テメェ…かえって煽ってやがる。
そのやたら過剰な反応に、周りの男共はより一層、ニヤニヤしてからかいを深めていく。
「エルフェルト、さっさと行くぞ。」
店の入り口で、一言声かけすれば、「ハッ…ハイっ!!」と一言発し、慌てて立ち上がるエルフェルトに、
ピーピーと口笛を鳴らす野郎共の姿。
「あ、貴方達の声援は入りませんっ!!」と律儀に振り向いて言い返すエルフェルトに、
サービス精神旺盛かよ。と心の中で突っ込んでしまう。
俺は先に店の入り口を抜け、表に停めていたファイアーホイールMK.IIに跨り、慌てて店から出てきたエルフェルトにヘルメットを渡す。
店の入り口や窓から顔を出し、しつこくピーピーと口笛を鳴らす奴らを睨みつけながら、
近付いてきたエルフェルトの身体を引き寄せ、顎を掴み、己の唇を目の前のコイツの唇と重ねる。
思わず逃げようとした身体を固定させ、奴らに見せつけるように舌を絡ませる激しいキスをしまくった。
初めは抵抗しやがったが、その内快感に飲まれ身体がくったりし、
俺の方に体重をかかったのを見計らってキスを止め、ヘルメットをかぶせる。
口笛はその内鳴らされる事が無くなり、俺の顔を羨ましく見つめる奴らを一瞥する。
そのまま力が抜けたエルフェルトの腰を抱え込み、俺の懐に収め、
ファイアーホイールMK.IIのエンジンをかけ、発進させる。
道すがら、エルフェルトに何やら文句を言われたが、
そいつは着いてから聞くと言えば、奴は黙ってバイクから振り落とされない為に俺の身体にしがみついたのを確認をする。
そして、俺はバイクを思い切り飛ばしていく…。
◇◇◇◇◇
アジトに着き、エルフェルトは使い終わったヘルメットを此方に渡しながら顔を真っ赤に染め、
俺から視線を反らし、な、なんで…あんな事したんですか!!と聞いてきやがる。
「は、恥ずかしかったじゃないですかーっ!?」
「奴らに解らす為にはアレが一番手っ取り早い。
…ったく、簡単にからかわれてんじゃねぇよ。
テメェのその反応一つ一つが、無駄に奴等を悦ばしてんのがわからねぇのか。」
「……え!?悦ばすって!?私っ!本気で怒ったりしてましたよ!?」
「…奴等なんぞ適度にあしらっとけ。相手にするだけ無駄だ。本気で相手しただけ、無駄に悦ばすだけだからな。」
「…つ、つまり、あの場所には……ソルさんみたいな性癖の人達がいっぱい居るって事…?……………い、いえっ!?な、なんでもないです!!!」
俺の睨みに、エルフェルトは肩をビクつかせ、慌ててアジトの入り口まで駆けて行った。
◇◇◇◇◇
荷物を置き、あらかじめアジトにて検証をする為に用意していた、寝室に置かれたベッドの準備を整えながら、
エルフェルトに事細かな内容を説明をしていく。
二人で巨大なダブルベッドのシーツを広げ、敷きながら、エルフェルトが確認の為の復唱を俺に問いかけ、それに俺は耳を傾ける。
「な、なんか…随分御大層な事になってますけど…っ。
つまりは…スキン買うのが手間だったから、法力で何とかしようって思ったって事でいいですよね???」
「簡潔に言えはそうだな。」
「か、簡潔も何もっ!小難しく言う方が寧ろ難しいですよっ!?
…で、でも…何でそんなソルさんの都合による研究に、ファウスト先生が協力してくれたりしちゃったんですか???」
「さぁな、そりゃ俺も知らねぇ。あの野郎は頭狂ってやがるからな。判る筈もねぇ。」
「どっちかって言ったら、ファウスト先生の方がソルさんよりよっぽど常識人…
い、いえ!!なんでもありません!!」
「…さっきも思ったが、テメェ随分と言う様になって来やがったじゃねぇか?」
「いえいえだって!!…それはアレですよっ!…慣れとノリですよっ!!!
…って、…な、何してるんですかっ!!?」
「…調子に乗ってるガキに再教育を施すのが大人の務めってな。」
「…こ、コレっ!!教育と表して大人が子供に対してする事じゃないですよっ!?
いえ寧ろ大人同士でする…ってそうゆう事じゃなくってっ!!!」
「…いつも思うが、テメェの服は脱がし辛えったらありゃしねぇ。」
「ああああああ!?当たり前の様にストッキング破かないで下さいよおっ!!!?
ソルさんのせいで何枚ストッキングやタイツやスパッツ駄目にしてると思ってるんですかぁ!!?」
「その分の金は渡してるだろうが。」
「…そ、そそうゆう問題じゃあっ………。え!?」
「少しじっとしてろ。テメェで例の法力の検証の為の法力をかける。」
「…検証…って…もしかしてですよ?さっき言ってた法力って、結果が確立されていないんですかっ!?」
「…だから“実験の検証”に付き合えってさっきっから言ってるだろうが。」
「…も、もし、もしもですよっ!?研究が失敗してたら、わ、私は一体どうなっちゃうんですか…???」
「…ま、最悪妊娠しちまうだろうな。」
「…………!?
そ、っ!!?…それってとってもマズイじゃないですかあっ!?
ジャック・オーさんからお説教されるどころの話じゃ無いですってばっ!?」
「俺が前にテメェに、半年間程の基礎体温や月経周期なんやら聞いてたのは覚えているか?」
「あ…あの時は、本当に新手の嫌がらせかと思いましたよ…。でも、ソルさんは顔色変えずに淡々と聞いてくるし、
別に実害も無かったので、今聞かれるまでちょっと忘れてましたけど…。」
「集計したデータ上ならばテメェは今丁度安全日の真っ最中だ。
実験が失敗したとして、妊娠する確率は危険日と比べて約半分以下だな。…ま、安全日なんぞ関係無くガキは授かる時ゃ授かっちまうがな。」
「ひ、他人事過ぎますうっ!?」
「検証繰り返して99%までの安全性は叩き出したんだがな。ま、そりゃあくまでもデータ上での事だ。
実験の検証だからな、アフターピルも使えねぇ。…授かっちまったら、
そりゃそのガキがどうしても産まれたがってるって事で諦めるしかねぇな。」
「…そ、ソルさんは…ほ、本当にそれで良いんですか…?
…わ、私がソルさんの子供…授かったら、ご迷惑なんじゃ………。」
「あん?…自分で始めた研究の失敗は自身でカタをつけるだけの事なんだがな。」
「…認知しないで私と子供を捨てたりとか…っ!!!し、しないですよね!?」
「んなもんするかっ!!!そんな事した日にゃ…カイの野郎やその連れ、ジャック・オーやシンやラムレザル、
奴等に毎回うざってえ程説教食らうだろうがっ!」
「じゃ、じゃあ…、私がもし、ソルさんとの子供授かったら、私との子供…可愛がってくれますか…?
わ、私の事も愛してくれますかっ!!?…………、
…な、なんでそこで目をそらすんですかぁあああっ!!??おかしいじゃないですかぁああああ!!!!!」
「…マジでヘヴィだぜ……、…そもそもだ!まだ実験は失敗してねぇだろうが!!!
そんな先の不安なんぞ、事が起こってから対処すりゃいいじゃねぇか!!!」
「誤魔化した!また誤魔化したぁああ!!!
この際だからハッキリ聞きますっ!ソルさんはっ私の事どう思ってるんてすかっ!!?
この指輪くれた時も、男避けだって言っただけで肝心な言葉は結局何もくれなかったじゃ無いですかっ!!
わ、私の事………っ、愛して…くれているんですか…っ!!!それとも…やっぱり身体目当てなんじゃあ…!!?」
「やっぱりってのはなんだ!?
そもそもだ…そんな軽い覚悟でテメェみたいな面倒くせぇ奴選ぶ訳ねぇだろこのボケっ!」
「ぼ、ボケって!?」
「そのテメェの身体が一番厄介なんだよ!!!
テメェの身体知っちまったが故に、他の女の身体なんざ興味すら沸かねぇ!!!
殺戮欲求を性欲で誤魔化していた俺からすりゃこんなもん死活問題以外の何者でもねぇだろうがっ!!」
「それってやっぱり身体だけなんじゃ!?」
「顔もだ!!!」
「か…か…顔っ!?…」
「慈悲無き啓示が意図的に創り出したテメェはピンポイントで……、…………ついてきやがる…っ、」
「…ついてきやがる…?、何をですか…???」
「………………………っ!…いいからテメェは察する事を覚えやがれっ!!!」
「……えっと…あの……、か、顔が…好みって………事ですか……?
そ、それはそこはかとなく嬉しいですが………ジャック・オーさんに似てるからだろうな…とも思うので…複雑な気持ちに……。」
「何言ってやがる。テメェの方がよりガキくせぇ顔してやがるに決まってんだろうが。」
「ひどい!!ガキくせぇって!?…ソルさんはいつもそうやっ………………、…っ…ンっ!?うむっ…んっ、んんっ!!!」
「………っ、、………、…エルフェルト、テメェ…今、舌だけで軽く逝きやがったな…。
ったく、テメェの顔は、手に届かなかったあの頃を思いだす……。…より質が悪りぃ。」
「…そ、ソルさ……っ、!」
「…生憎だが、俺はテメェとのあれそれを表現出来る言葉は知らねぇ。
身体で感じろ。…テメェが求める愛なんかよりよっぽどヘヴィなヤツだと思うんだがな?」
◇◇◇◇◇
…頭が真っ白に飛ぶ。
前に勉強のためにと読んでいた成人雑誌での、夜の営み的な小説で掲載していた言葉が脳内を駆け巡る。
気持ち良すぎて頭がおかしくなりそうな寸前でどこか違う場所に飛んでっちゃう感覚が、いつも慣れなくて、
ただひたすら怖くて必死にソルさんの腕にしがみついてた。
怖い、怖いんだと首にまとわりつくようにしがみつけば、互いに近づいた唇を重ね合わせ、私の頭をぎゅと抱いて引き寄せる。
私は…キスが一番好き。
その魅惑に取り憑かれた私は、なんでもない時でもひつこくソルさんにねだって、最近は専らウザってぇと足蹴にされてしまう。
でも…こんな時ばっかり、ソルさんは、私の唇ばっかり沢山奪っていく…。
私の最奥で容赦なく暴れるソルさんのものに翻弄されて、これ以上はおかしくなっちゃう!!そう泣いて訴える私の唇を深く容赦なく。
気持ち良すぎて変になって、私は毎回ソルさんのお口で嬌声を上げて、身体をしならせ、沢山イッちゃって、
態とそうしてるのはわかってるんだけど、ソルさんは、たまに…ホント、ヒドイって思う。
私が一番苦しくって、一番悦んで狂っちゃう方法を選んでくるから…。
「…むっ、んーっ、ぁ、む〜っ、んんっー!!…ッん、んんー、んーっ!!!!」
あっ、あ、あっ!、またっ…ギュッて締まるっ…、締まってるの自分でわかっちゃっ…!!
おくっ、…おくうっ!!!
だめぇ!!…あー!!!くるぅうう!!!っ、来ちゃうのっ!!!
あっ、…くるうううううっ!!!!!
眉をしかめて、背中を仰け反らせて、掴んでた手に力が入り、
虚ろになった瞳から、私が勢いよくソルさんの唇から離れて開け放たれた口から、無防備に何かが、こぼれて落ちていく…。
開放された唇から心の声と実際の声がシンクロして放たれる。
でも、絞り出された声は、心の声より曖昧でもっと濁ってて、やだあ!!そんな恥ずかしい声出したくない!って思っても、
今更止められなくて。
とめどなく止まらない自分の声まで自分の耳を犯していく感覚と、目を開けたら、
私を捕食してギラついてる視線といかにも愉しいとばかりに嘲笑う口元、
声を圧し殺して小刻みに繰り返される吐息に、私は余計に恥ずかしくなって、ギュッと目を瞑って顔を反らした。
これ以上…!!これ以上ッ快感に晒されたらまた意識飛んで狂っちゃうっ!!!
過去に何度かそんな事になって、私自身は全く記憶に無い事を私から積極的にソルさんにしちゃってたって事が何度かあるらしくて、
その聞かされた内容が余りにも恥ずかしくて、だめっ、これ以上はだめと訴えても、取り合ってなんてくれない。
快感に足掻くと、すぐ見抜かれて、今よりもっと激しく感じるように態とらしく腰を畳み掛けられる。
「あっ!!あーっ!それらめぇれすぅ!!らめぇなんれすぅ!!!…あー!!あっ、あーーっ、あーっ!!イクッ、イグのぉっーー!!!
ソルさっ、ソルさんっ、またイっちゃう!!わた…わたしっ!!?またイっちゃあああっ!!!」
「…っ…たく…!…俺がイクまで待てねぇのかっテメェは…っ、
……いいぜ、エルフェルト、さっさとイけっ!…だが、イキ切った後も建て続けっつうのを忘れるんじゃねぇぞッ!!」
「は、はいいっ!わ、わしゅれたりなんかっ………!!んぉおおっ!!んあぁあアあっ、ああっ!!んくぅーーっ!!!」
イく瞬間、正常位で頭を枕に強く擦り付け、その枕の端っこのカバーを自分の両手でぎゅ〜っと掴んで眉をギュッとしかめる。
頭が真っ白くなって飛ぶ。
視界が暗転して、あっ、あっ、あっあーー!!と自分の声だけが頭の中を駆け巡る。
少し浮上して、その後、まるで落ちるかのように頭が暗転する。…ハッ、ハッと息が乱れた。
私の息が乱れて落ち着かない内にズクぅ〜っとソルさんのいきり立ったモノが奥に突き入れられ、
先程よりも硬度が増したソレに私の視界はよりチカチカして思わず「ひやぁああっ!?」と声を荒げてしまう。
「ッ…エルフェルト…やっとの帰宅か…っ?……帰宅早々、早速テメェには大仕事が残ってるんだが…聞きてぇか?」
ソルさんのいつもの冗談交えた言葉。含み笑いを浮かべている表情は、切羽詰まっていて、
ヘッドギアから滴る汗が頬にこぼれて落ちる様を見て取れた。
私は判ってると伝えたくて、言葉じゃなくてソルさんの頬に手を添えて此方から深めの口付けをしていく。
お互いに快感に呑まれて夢中になって、ちゅうっ、ちゅっ…ちゅうと激しく音を立てながら、
唇を重ねたり離したり舌だけ絡めたり激しく吸い付いたり…そんな事を繰り返しながら、
下半身はソルさんのいきり立ったモノが私のぐちゃぐちゃに濡れそぼった秘部をガンガンかき混ぜて突き上げてくる。
イッたばかりの身体にこれは余りに毒で、ゾクゾクした身体はまたもや、
膣奥がキュンキュンと勝手にソルさんのモノを締め付けてる様を感じ取って恥ずかしくなる。
互いの唇が離れた場所からつつぅと唾液の糸が数本繋がって、互いの口角から垂れた液が激しさを物語っていた。
「やらっ!!はげしっ…!!ソルしゃんっ!!!!あっ!!あん!!らめ、らめぇれすっ!!
しょんなのっ、もたなっ…もたないれすからぁあああ!!!」
「…ッは……何度キメりゃ…、テメェの身体は満足するんだ?……ッ!?
…っ、んなこたぁ今はいい!!エルフェルトっ!…イクぞっ!!!……」
「…ソルしゃん♡…きて…!!きてくらはいっ!!!んんんあああああ!!!!」
浮かせて仰け反った腰を強く捕まえて、小刻みに私の最奥をぶるるとソルさんのモノが射精で震えてるのを感じ取る。
びゅッびゅうーッと勢いよく放たれたソルさんの精子の感覚を中で感じてゾクゾクしてしまう。
出してる最中にも、より奥へ奥へと突き入れる感覚と、耳元で聞こえる快感に耐える食い縛る吐息に、ゾクゾクし過ぎて、だんだんよくわからなくなってくる…
ああああきもちいいよお♡♡♡あたま可笑しくなっちゃうッあたまおかしくなっちゃうッ!!
「……そ、ソルしゃん…ソルしゃんの…たくさん出てますう…♡、まだ出てる…♡…あ、あふ、あん、あ!!」
「…ッ…ハッ…テメェ…エルフェルト…ッ、そりゃ…一体なんの実況だ…、っ、…」
「……、ソルさん♡…もっとちゅーしてくらはい♡…ソルさんのちゅーきもちいいんれすう…♡」
「…、ッ、…テメェ、…堕ちやがったな?
…いいぜ…?もっと可愛がってやる。顔を上げて舌を出しやがれ。…そうだ…、そのまま思い切り出してろ…?」
「ふぁい♡」
「…そうだ…いいぜ?、エルフェルト、お前から俺の舌を舐めやがれ、その後、お前から腰を動かしてみろ。」
「ん、むう…っ、ふぁい♡…………ん、んんんつむっ、んああああああ♡おくきもちいい…♡…おぐうっ♡…ソルしゃんはきもちいいれすかあ?」
「…エルフェルト、…此処はなんて言う?」
「え?ここれすか?ここはれすねー?おま○こって言って、おとめのいちばんたいせつなところなんれすよ?」
「ほう?このだらしねぇ液がダラダラしてギュウギュウ締め付けてきやがるのがそうなのかよ。」
「それはれすね?…ソルしゃんのおちん○んをきもちよくしたいからなんれ……っ、あっ♡ッひゃうっ……ッ♡」
「……ッ、の割には、テメェの方がよっぽど愉しんでるように見えるんだがな…、
ま…強ち間違ってはいねぇか…。ハァ…ッ、中ぬるっぬるな癖して、容赦なく締め付けてきやがる…ッ!
…くそ……たまんねぇ…ッ、……。」
「あ、ああっあー♡!!ソルしゃんのお○んちんきもちいいぃ♡
ソルしゃんのおち○ちんでわたしのおま○こたくしゃん突いてくらさっ…♡あ、ああああああ!!!」
「…いいぜッエルフェルトッ!!“良い子”にゃ、褒美をくれてやるっ!!!」
◇◇◇◇◇
「わ、わ、わたしっ!!!き、記憶ありませんよっ!?」
「そうと言うと思ったからな。こうして録音機器でエルフェルト、お前の喘ぎ声撮ったんだろうが。」
ソルさんが掌に乗せている、小型法力録音機から、昨晩の激しくまぐわっていた自身のあられの無い声が聞こえてくる。
しっかりと録音された声は、生々しい状況が鮮明に脳内に再生された。
『そるしゃん!!…えるのお○んこきもちいい♡♡♡♡
もっとお♡♡♡もっと♡♡♡はげしいのくらさい…♡』
『…あ?“何が”欲しいのかが言えてねぇな。もう一度言ってみろ。』
『…い、いぢわる…しないれくらさいっ…!!』
『俺はお前が何を欲してるのかを聞いただけなんだがな。言わねえなら、何をやって良いのかわかんねぇだろうが。』
『〜〜〜っ!…そ、そるさんの…おち○んちん、わ、わたしの…わたしの…っ!!、ここに…挿れて…っ……ほし…』
『よく見えねぇ。わかるように見せてみろ。
………っ、そうだ…エルフェルト。お前もだんだんわかってきたんじゃねぇか……。
俺は欲に忠実で素直なやつは嫌いじゃねぇ……っ。
今の俺は気分が良い…。特別にお前が欲してるもんをやるから覚悟しろ…!!』
『…っ、んっ♡んぁあああ♡♡♡♡んっんぁあっあ♡きもちいいよう♡♡♡♡きもちいいーーーー♡♡♡♡ー!!!』
『……っ!……エルフェルト…!!受け取りやがれっ!!!テメェに俺の“全部”をくれてやる…っ!!!』
◇◇◇◇◇
「ああああああーーーーっ!?!?…わっ、…わかりましたからっ!!もう!!これっ、これっ消して下さいっ!!!!」
ソルさんが持ってる録音機を奪うために必死になるも、身長差とソルさんの身のこなしで軽くあしらわれてしまう。
「どうして避けるんですかぁあああっ!!!!?いいから中身消させてくださいいいいっ!!!!
そっ、そもそもっ!!そんなの録音して、一体どーするおつもりですかっ!?アレですかっ!?
データを焼き増しして、一儲けしようとか、そんな魂胆ですかっ!?!?…ソルさんの鬼っ!!悪魔っ!!!」
ポカポカとソルさんの胸板に叩きまくって泣きじゃくる私に、心底呆れた表示で、ソルさんに言葉を投げかけられた。
「オイ、暴走娘。テメェの発想は相変わらず斜め上をいきやがる。
そもそも、こいつの中身はテメェの声だけじゃねぇ。俺の声も入ってんだ。…そんなもん自ら世にバラ撒く奴が何処に居やがる。」
「そんなのっ!…修正すればどうとでもなりそうですしっ!!それくらいしか、ソルさんが…
わ、私との…その、…さ、最中をですねっ!?わざわざ録音する意味がわからな…………」
「………………。」
「………あの………?………えっとぉ……」
私の言葉にソルさんが顔を背ける。その仕草で、ふと、軽率に自分の都合の良い妄想が頭をよぎり、
確認したくてついソルさんの表情をマジマジと見つめてしまう。
私の言動と視線に、何かを悟ったソルさんは、いかにもバツが悪そうな顔をして、視線を合わせてくれない。
え…?これ…ホントにそうなの…???と思わず自問自答して………、どんどん顔が赤くなっていくのを、自分で自覚してしまう…。
「………な、なんか、…ご…、ごめんなさい…。…あ、あの……、」
「……やめろ。…謝られる方が却って堪える。」
軽く舌打ちして顔を逸らすソルさんに、私も驚いて、慌てて視線をそらした。
「だ、だってですよ?、ソルさんが…まさか……わ、私との最中を、振り返ることなんて、あるわけが無いと思い込んでてですねっ!?
……私…てっきり、お一人様の時は…私じゃなくて、現在夜の営み出来なくなっちゃいました、
奥様であるジャック・オーさんを妄想されて、励んでらっしゃるかなぁって、ずっと思い込んでましたし…。」
「……テメェ…マジかよ……。」
私の発言に、まさしく信じられねぇと表情に出ているソルさんに、私は余計に戸惑ってしまう。
「あ、あの…?」
「……生憎だがな、俺はこの身に成り果ててから、ジャック・オー、アイツで“抜いた”事は一度もねぇよ…。」
「ええええ!?…だってっ!?………ジャック・オーさんの事、…愛してますよね?」
「……………。」
私からのふとした質問に、眉を少しだけ潜めて目を閉じてすぐ開いたソルさんは、
無言で私を睨み、その視線はズケズケと言うんじゃねぇよと訴えてるかのようだった。
「ソルさんのその無愛想で素直じゃない反応は…、まさしくYESですね。
なるほど…愛してるからこそ、言葉が悪いですが、妄想で汚したくない的な!
うんうん!それなら、私がよく勉強の為に読んでる恋愛小説にも出てくるフレーズです!」
「オイ!何勝手に納得してやがる。」
「え?違うんですか?」
「好いた女を脳内で汚したくないだと?俺はそんな事一度も考えた事ねぇよ。
そもそもいちいち知らねえ女で妄想するよりか、ハナッから事細かに細部まで知ってる女でさっさと済ました方が手っ取り早いだろうが。」
「………え!?…さ、細部とは…???」
「あん?、そんなん、テメェにもついてるマ…」
「わーーーーーーーっ!!!!
わかりましたっ!!わかりましたからっ!!!みなまで言わないでくださいよっ!!!
でも!それでは、ジャック・オーさんで妄想オナ……
ゴホンゴホンッ!!!
ジャック・オーさんを妄想して一度も致して無いって言うのは、矛盾してるじゃないですかー!?」
「何にも矛盾なんかしてねぇよ。…この身体に成り果てる前は、常々そうしてたからな。」
「…え!?……、…え、えっと……。な、ナルホド………。
でも、今の身体になってから、そうしなくなったのは……。」
「…しなくなったんじゃねぇ、“出来なくなった”だけだ。」
ソルさんの睨みで、きっとこの話題は、これ以上踏み込んではいけないって察してしまう。
…でも、私の悪い癖で、…つい踏み込もうとしてしまう。
「それってやっぱりっ!!かつてのアリアさん、もといジャック・オーさんを傷付けてしまったっていう罪悪感から…!!」
「……エルフェルト!!……これ以上、この話は無しだ。」
「待ってくださいっ!これだけは言わせて下さいっ!!!ジャック・オーさんはっ!!!
“過去のソルさんがした事”を、一切怒ったりなんかしてません!!そう仰ってましたっ!!だからっ…!!!」
「“だからこそ”だろうが。」
罵られて怒りをぶつけられた方がかえって救われる事がある。
そんな旨を語ったソルさんに、私はつい神妙な表情を浮かべてしまう。
「…ソルさん………。
………って!!誤魔化されませんよっ!!!
その理由が、私の恥ずかしい声の録音消さない理由になんかなりませんっ!!!」
「………チッ。…この音の使用理由が分かっただろうが。」
「そ、それでも、ダメなモノはダメっ!!!
ソルさんがお一人様で使用するだけならまだしもっ、そ、そのっ…!私とのエッチの時にまで、
態と煽る様に聞かせて来そうで怖いですもんっ!!!」
「……テメェ…そんな事考えてやがったのか…。
エルフェルト、最近のお前は、段々淫乱さに拍車がかかって来やがってるな。
少なくとも、俺はそんな使用方法なんぞ思いつきもしねぇ。」
「…どっ、どの口がそんな事宣ってんですかぁあああっ!?!?
わ、私はっ!!たっ…確かにっ、い、淫乱かもしれませんがっ!!!
それはっ!そ、ソルさんがっ、わ、私にっ、エッチな事ばっかりしてくるからじゃないですかっ!!!
い、淫乱なのはっ、私だけじゃないですっ!!!ソルさんだって!!!」
「当たり前じゃねぇか。テメェら“ヴァレンタイン”にギア細胞がどのように関わってるかはわからねぇが、
俺は人間だった身にあらゆる本能が増幅されるギア細胞を無理矢理投与されたんだ。
暴発する性欲のコントロールなんぞ、出来る訳がねぇ」
「そ、それって…たっ、ただの開き直りっ!?ただの開き直りじゃないですかぁああ!!!
そうですか…っ!…ソルさんがっ、そのつもりならっ!私だって手段を選んでなんかはいられませんっ!!!
ソルさんっ!!!覚悟してくださいっ!!!!」
掌を広げ、法力を使って、自分の懐から愛用のスナイパーライフルを取り出し、自身の胸の谷間から銃弾を取り出し手早くセットをする。
私のただならぬ殺気を察知したのか、ソルさんは、私の手元を掴みかかろうとする瞬間、私の手元の引き金は引ききった後だった。
ソルさんが銃弾の効力に贖うも、胸を抑えてもだえ苦しむながら、何か幸せそうな表情をして事切れたのを確認してから、
ソルさんが手に持っていた録音機を私は手に取り、すぐさま自分の恥ずかしい声をデリートし、
ほっとした後、私はもう一度、録音機の録音機能をセットして、自分の声を吹き込んで行く…。
◇◇◇◇◇
『ソルさん、いきなりマグナムウェディングを放ってしまって、勝手に録音したモノを消してごめんなさい!
でもっ…わ、私の恥ずかしい声は残しとく訳には絶対にいかなかったんです!!
代わりと言ってはなんですが…
そ、その…ソルさんが、お城から離れてお一人の時…。法力通信で私に連絡くれたら…、その…そのですねっ!
わ、私っ!…ソルさんの為になにか出来る事がありましたら、何でも頑張りますからっ!!
そ、そのときは…、また…優しく教えてください…ね?
…ソルさん…すき…です…。
…っ、……な、なんでもないですっ!!!
それでは、また。
お仕事、頑張ってください!』
◇◇◇◇◇
粗方仕事が終わり、滞在先の宿泊所のあてがわれた個室に戻り、汗や返り血などを流す為に手早くシャワーを浴びた後、
ふと荷物の中から、見えた録音機を手に取った。
エルフェルトの声を気まぐれで録音した事を思い出し、
程よい疲れと相まって欲求不満気味だと認識した瞬間には、既に己の指が録音機に自身の法力を送り、起動させた。
「…………おいおい…っ、マジかよ…。」
録音機の音が思っていたものと違う内容にすり替えられ、思わず、やってくれるじゃねぇかと呟く。
今夜はこの録音機のおかげで安易に手早く“抜ける”ものだと思い込んでものが、まさしく“寸止め”を食らわされた状態になり、
思わず、深く溜息をついた。
「……明日には即イリュリア入りだが……、その前に悪戯が過ぎるガキには仕置きが必要か……。」
自身の掌に、法力通信を出し、とある場所に発信を出す。
通信用の魔法陣から聞こえる声が、あからさまに戸惑ってやがり、思わず自身の口角が上がった。
録音機に、吹き込まれた俺の為に何でもすると語った声を思い出す。
今夜は長くなりそうだ…。
「覚悟しやがれ。」
宣戦布告の如く、俺はハッキリと言い切った。
◇◇◇◇◇
検証実験から一ヶ月後、流石に卵子がエルフェルトの膣床に着床したか否かは、プロの医学者でないと判断が難しく、
俺とエルフェルトは、検証実験を行った前の隠れ家にて、ファウストを呼び寄せ、実験の検証を行っていた。
「ええ、法力によるエコーで確認した所、エルフェルトさんには、妊娠の傾向は一切見当たりません。
人の場合は、三ヶ月程待たなければなりませんが、エルフェルトさんもソルさんもギアですからね。
カイさん夫婦の実例では、一ヶ月にはもう妊娠の特徴は出ていた。カイさんは人の身であり、ディズィーさんはハーフギアです。
そのお二人の妊娠傾向は人の三倍程の速さでした。あなた方二人は、傾向が出るならそれよりもっと早く出る筈です。
今、エルフェルトさんの身に何も異変が無いと言う事は、検証実験は成功したと見て良いでしょう。」
やはりな…。ギア細胞の核分裂は人の細胞より数倍早い。一ヶ月前後には結果が出るだろうと見越していたが、正しかったか…。
「ほ、本当ですかっ!?実験は成功なんですね…!?」
ただ一人、その細胞の仕組みを理解していないエルフェルトが、ファウストに何度も訴えかけていやがる。
コイツ…俺の言葉を信じていなかったな…?
ファウストから説明を受ける前に、あくまで予測だが、実験は成功してる筈だとエルフェルトには説明していた筈なんだがな。
「そうですね。もし、検証実験自体が“上手く行ってなかった”、妊娠する状況下にそもそも至っていなかった”という可能性は確かに残りますが…。その時の状況は、私には知り得ない事ですので、ご自身の記憶から、確かめた方が宜しいかと。」
「え?どうゆう事ですか?」
「…つまりだ、エルフェルト、テメェが妊娠に至る程、俺の精子が十分テメェの膣内に注がれていたかって事だ。」
「………ぇ、…え!?」
タダでさえでけぇ目を大きく見開き、俺を見つめたかと思うと、急に顔が真っ赤になるコイツを見ながら、
やっと理解出来たのかよと溜息をついた。
俺の言葉に、もう少しオブラートにですね…。と苦笑いしている紙袋野郎に俺はもう一度声をかける。
「検証実験に、そんな初歩の失敗なんぞ起こす訳がねえ。」
「ええ、元々研究畑に居た者にとっては、検証は“検証の為の道具は多すぎる位の数や量を用意する”のが基本ですからね。
なので、その辺りのミスは何も心配してはいませんでしたよ。」
「…テメェ、“そいつ”はもう此処を出た瞬間から忘れろ。」
「ええ、勿論です。私だって命は惜しいですからね。
…ところで、その研究結果は、世界的大発見ですが、世に知らしめ、特許を取って、大儲け。という道もありますよ?」
「そんなもの、興味ねぇよ。」
「私的には、この法力が世に正しく出回れば、強姦による不慮の妊娠や、
望まぬ妊娠に対する新たな特攻薬になる可能性が秘めていると感じますが…、
でも、それにはこの研究を生み出した研究者、ソルさんあなたからの申請が必要となります。
ですが、今のあなたはそのような事は望んでいない。」
「俺が望んだとしてもだ、ピル等の薬を扱う製薬会社やらの世の利権を牛耳ってる奴等に潰されるのがオチだろ。」
「でも、今のあなたには、最大級の後ろ盾があります。“彼”ならば、その利権と闘い、勝ち抜く事は今なら可能だと…。」
「あの“坊や”がいかにも喜びそうな案件だせ…。
この法力を世に広めてぇなら、テメェがしろ。俺は世界の利権やら金やらは今は必要ねぇよ。」
「それは…私の勝手なこだわりで、お断りさせて頂きますよ。
研究を生み出した第一人者が、キチンと世に評価されるべきだと、私は考えますので。」
「今この瞬間から、俺はこの研究の利権全て手放す。
後はテメェの好きにしろ。世に広めるもそのままテメェが持っていて利用するのも自由だ。」
「ソルさん、それは…!」
「俺が牛耳るよりか、よっぽどマシな気がするけどな。」
「そしたらば、これはあくまでもあなたの研究として私の手に届く範囲で使わせて頂きます…!
もし、気が変わりましたら、何時でも連絡下さい…!」
奴の言葉に俺はもう何も語らず、背を向け、アジトの出口に向かった。
俺と奴とのやり取りに、ただポカーンと聞いて居たエルフェルトが、ファウストにお礼をした後、慌てて俺の後を追いかけてくる。
何か言いたげなエルフェルトに、ヘルメットを渡し、ファイアーホイールMK.IIを発進させる。
これでやっと、全ての準備が整ったと感じながら。